内容説明
「現代アートは難しい」と言われる。デュシャンが便器に署名を入れたことがなぜ革命的だったのか?村上隆が作るフィギュアやハーストの鮫のホルマリン漬けのどこがアート?現代において美術は思潮や文化を映す鏡のような役割を持っているため、作品制作時の時代背景や中心概念を知らないと理解しにくいのだ。そこで本書では、20世紀以降の美術を、タテ軸(歴史)とヨコ軸(コンセプト)から位置づけ、どのような文脈で何を訴えているのか、読み解くための100のポイントを解説した。この一冊で、鑑賞が何倍も楽しくなる。
目次
20世紀美術の系譜と展開
動向・世界編(アール・ヌーヴォー;フォーヴィスム;キュビスム ほか)
動向・日本編(ルポルタージュ絵画;具体美術協会;実験工房 ほか)
コンセプト編(アーティスト・イン・レジデンス;アート・マーケット;アート・マネジメント ほか)
著者等紹介
暮沢剛巳[クレサワタケミ]
1966年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。美術評論家。武蔵野美術大学、多摩美術大学、女子美術大学、跡見学園女子大学、桑沢デザイン研究所非常勤講師。アート、建築、デザイン、サブカルチャーなどに関して幅広く執筆活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
9
アートマネジメント(138頁~)。芸術経営の話。芸術分野でメシを食うのがまだ困難な日本。どんな政策が必要なのか、今日的に課題も多い。雇用問題、所得問題として。サイト・スペシフィック(176頁~)。美術品が特定場所に帰属する性質がある。サイバネティックス(180頁~)。N.ウィーナー。調整部、操縦部、統治部のシステムの統合を志向。マルチチュード(226頁~)。支配に抵抗する民主主義の可能性を秘めた存在としての位置づけ。A.ネグリとM.ハート。越境するグローバルな集合体。アーツの多様性、個性を表す術語を知る。2013/04/29
awe
4
良著。現代美術に関する基本知識が網羅的にまとまっていて、自分のような美術の素人でも面白く読むことができる。レディメイド、ダダイズム、アヴァンギャルド、バウハウス、抽象表現主義、讀賣アンデパンダンなど聞いたことはあるが具体的には知らない数々のキーワードについて知ることができた。個人的に興味深かった項目をいくつか。まずはアートマネジメント(p138)。国家が予算をつけて主導する欧州型、民間(個人篤志家)主導の米国型があり、企業が芸術支援するあり方をメセナというらしい。日本だと資生堂やサントリー。次はキッチュ2021/09/26
六波羅
4
現代アートに関するキーワドの辞典。参考写真が殆んど載ってないので、余程、現代アートに詳しくないと苦戦すると思う。メジャーな作家は、美術出版社の本と併読すれば理解が深まるだろうが、美術出版社の本にも載ってないマイナーな作家はPCやスマホを活用すればいいと思う。
keepfine
2
予想外に良著だった。もともと美術作品の最終的な意味は作者の意図へ帰着させられてきたが、複製技術の発達によりオリジナリティや作者の特権性は喪失(フーコー)。「作者は作品の構成物の一部に過ぎない」とする「作者の死」(バルト)により、「アウラ」(ベンジャミン)に価値を見出す従来の視線は成立しなくなった。従来の「礼拝価値」から、体系的な分類/収集を前提とする「展示価値」へと大衆の規範が移行し、美術館という装置の発展に寄与した。構造主義~ポスト構造主義の議論がシンプルに援用されている。2017/01/20
ゆっき~
2
ある程度知識があるというか、作家の名前を見てなんとなく作品が浮かぶ程度の人向け。通読はなかなか大変。わからないキーワードにぶつかった時に事典として使うなら有効かな。2011/11/01