ちくま新書
靖国史観―幕末維新という深淵

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  • サイズ 新書判/ページ数 206p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784480063571
  • NDC分類 175.1
  • Cコード C0212

内容説明

司馬遼太郎をはじめ、今や誰もが一八六七年の「革命」(=明治維新)を肯定的に語る。けれども、そうした歴史評価は価値中立的ではない。なぜか。内戦の勝者である薩長の立場から近代を捉えた歴史観にすぎないからだ。「靖国史観」もそのひとつで、天皇中心の日本国家を前提にしている。本書は靖国神社創設の経緯をひもときながら、文明開化で儒教が果たした役割に光をあて、明治維新の独善性を暴きだす。気鋭の歴史学者が「日本」の近代史観に一石を投じる檄文。

目次

第1章 国体(国体の本義;寛政の改革;天祖の創出;祭政一致国家という言説;戦闘者としての武士の再興;天壌無窮の信仰;国体明徴運動;平泉澄の歴史認識)
第2章 英霊(靖国の祭神;誰が英霊なのか;幕末の英霊たち;「英霊」の原義;藤田東湖)
第3章 維新(維新の本義;革命と相違;万世一系の創出;「中興」のあと;武家政権についての歴史認識;ナショナリズムの勃興)

著者等紹介

小島毅[コジマツヨシ]
1962年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学人文社会系研究科助教授。専攻は、儒教史、東アジアの王権理論。2005年に発足した文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成」の領域代表を務める。多岐にわたる研究領域をかろやかに往還し、近代史をラディカルに問いなおす気鋭の歴史学者として脚光を浴びている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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きいち

17
六十年前の戦争の捉え方のズレがもたらす対立を、百四十年前の戦争の観点から相対化してしまおう、という意欲に満ちた本。靖国創建の契機は戊辰戦争の官軍側の死者、そして政府転覆を企んだテロリストの顕彰。だったら両方同じ穴のムジナやん、と。著者が檄文というだけある、思いの強い本ならではの愉しさだ。◇「国体」も「英霊」も「維新」もみな儒教の古典に出自を持つ言葉だし、文明開化は儒教化でもあったこと、靖国神社が儒教の伝統の直系にあることはとても重要な指摘だ。◇日本を叫ぶ人たちが中国や西洋の論理で動いてる状態の典型だよな。2014/02/11

おおにし

13
靖国神社の思想的根拠は神道ではなく儒教にあるという靖国史観は納得できるものだった。英霊、維新という言葉の出自はもともと儒教に由来するもので、明治政府が朱子学化していたという話も興味深かった。靖国神社に祀られた英霊とは一体何なのか知らないまま、毎年夏になるとぞろぞろ参拝している国会議員のセンセイたちは、靖国神社の歴史をちゃんと勉強すべきでしょう。2015/09/08

coolflat

10
靖国に祭られる英霊は日本のために戦った人達ではなく、天皇のために戦った人達だ。靖国神社の思想的根拠は神道ではなく儒教だ。国家神道が創設されるにあたり、儒教思想を提供をしたのは水戸学だ。明治維新で生き残った政府要人は自分達を正当化するため死んだ仲間を祭る。そこで利用されたのが招魂社(靖国神社)であり水戸学だ。日本は王朝交代がないことをもって、現実の政治権力(=幕府)に超越する神聖な王権を戴いている。この思想が万世一系の天皇制、即ち国体だ。これに殉ずる者は神の御加護を受けて戦った皇軍なので正当化されるのである2014/02/05

Ryoichi Ito

5
「靖国神社は,徳川政権に対する反体制テロリストたちを祀るために始まった施設だ。勤王の志士たちを顕彰・慰撫するために創設された」 決して,「日本のために」戦い,亡くなった戦士のためではない。明治維新で,外来の思想である儒教,特に朱子学が果たした 役割に光を当てる。「英霊」という言葉ですら外来語ではないか。 2023/01/21

Masakiya

2
司馬遼太郎をはじめとする、明治維新を肯定的に語る歴史観は内戦の勝者である薩摩長州の立場の擁護にすぎず、価値中立ではないと筆者は説く。本書の話題の1つを誤読曲解を恐れず超約すれば「太平洋戦争は戊辰戦争、西南戦争、日清戦争の延長上にある国体の護持を目的とした宗教戦争」ということになろうか。薩長藩閥政府は、クーデター及びその後の支配の正当性を万世一系の王朝を設定することに求めた。また自由や博愛といった西欧近代起源の普遍的なモノの追求に慣れてない日本に住む人々にとって、その国体を守り臣民であり続けることは、戦争の2014/07/19

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