内容説明
日本は神国である。―誰もが耳にしたことのあるこの言説。しかし、われわれは、「神国日本」がいったい何を意味するのか、本当に知っているのだろうか?その展開を実証的にたどってみると意外な事実が見えてくる。たとえば、「ナショナリズム」を高揚させるイデオロギーと思われがちなこの思想も、中世においては、必ずしも、他国に対する日本の優越を説くものではなかったのだ。その他、天皇・仏教的世界観など、さまざまな観点より、古代から中世、そして近世・近代に至る神国言説を読み解く。一千年の精神史。
目次
序章 神国思想・再考への道
第1章 変動する神々の世界
第2章 神と仏との交渉
第3章 神国思想の成立と変容
第4章 神国思想の歴史的意義
第5章 疎外される天皇
終章 神国の行方
著者等紹介
佐藤弘夫[サトウヒロオ]
1953年宮城県生まれ。1978年、東北大学大学院文学研究科博士前期課程修了。東北大学大学院文学研究科教授。専門は、日本中世精神史。実証的な文献読解をベースにしながら、当時の人間が生きた世界を深いレベルで捉えることを課題にした一連の仕事を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mazda
12
今回はきちんと読めず時間切れ…。再読しようと思います。2016/09/20
樋口佳之
9
神国思想は決して固定化された理念ではない。それは歴史の状況に応じて、自在に姿を変えてきた。/神国にも、天皇制にも歴史があって、古代中世近世近代とその内実は変化してきたって内容。知らないことばかりだから興味深く読んだけど、神国思想が普遍性を内包していた時代もあったんだよって話をどう受けとめるかで意見が異なる本でしょう。2017/04/18
おらひらお
5
2006年初版。一般的に言われている元寇以降に神国思想が興隆するのではなく、仏教の土着化の過程で生み出されたものとする見解を示されています。神道関係はまったく疎いので、付箋だらけになってしまいました。2013/11/03
バルジ
3
政治イデオロギーの付きやすい「神国日本」という概念を古代や中世の同時代背景を論ずる事で学術的な概念として見事に抽出されている。正直本書の中世史認識は古く今ではあまりお目にかかれない「権門体制論」に依拠するなど、少々アップデートしなければならない点も見られるが、それらを抜きにしても見事である。中世における「神国日本」は本地垂迹説と表裏一体どころか不可分であった。それは仏が日本の神の姿をしているからこその「神国」だったからである。仏教的世界観の中で位置付けられる日本の神々、そこに自民族優越思想は見られない2024/06/30
depo
3
著者独自の「神国」論が呈示されていて面白かったが、その前に「神」の定義をすべきではなかったのだろうか。日本の神は八百万の神々といわれるように、キリスト教のGODとは異なるものだし、著者の考える神とはいかなるものなのだろうか。2021/02/10
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