内容説明
「聖戦」という言葉は、今ではイスラムのテロ行為を正当化するための代名詞となっている。しかし、それが歴史の中で形となって現われたのは、中世ヨーロッパのカトリック世界においてであった。そこでは、異教徒に支配されている「聖地エルサレム」の奪還を旗印として、「十字軍」が構想された。ローマ教皇と教会法学者は、十字軍による非ヨーロッパ世界の征服・略奪を、道徳的にも法的にも正当化していた。その流れの中から登場したのが、「新しいイスラエル」アメリカである。今日、アメリカの突出した行動を支える思想として甦りつつある「十字軍」と「聖戦」思想の歴史をたどり、キリスト教世界の深層心理を探る。
目次
第1章 主の剣
第2章 「神がそれを望み給う」
第3章 十字軍、北へ―新しいマカバイ
第4章 神の鞭・悪魔の僕・ピューリタニズム
第5章 “新しいイスラエル”アメリカ
第6章 近代の十字軍思想
著者等紹介
山内進[ヤマウチススム]
1949年小樽生まれ。一橋大学法学部を経て、同大学院法学研究科博士課程中退。その後、成城大学教授を経て、現在は一橋大学大学院法学研究科教授。専攻は西洋法制史。著書に『北の十字軍』(講談社選書メチエ、サントリー学芸賞)などがある。なお、一橋大学国際共同研究センター研究員も兼任する
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感想・レビュー
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おらひらお
5
2003年初版。聖戦と十字軍の始まりから終わりまでを辿り、思想化した十字軍の展開までを見た本です。いつもながら人名に苦労しましたが、実りのある読書になりました。ヨーロッパの中だけの論理でいきなり殴り込みをかけられたイスラームもいい迷惑ですね。この十字軍の思想がオリエンタリズムと結びついていることは初めて知りました。2012/07/09
駒子
4
「十字軍の思想」は「制度としての十字軍」を超えて、第一回十字軍以前にも、現代にも現れる思想だった。2014/08/23
バルジ
2
基本的な西洋史の流れとキリスト教に関する予備知識が多少無いと読むのに苦労するが面白い分析視座で勉強になる。 キリスト教における「聖戦」観念の変容と「神の国アメリカ」に伝播し、21世紀の現代にまで影響を与えているその思想的水脈を一筋の線で描いている。 キリスト教世界に通底する思想を知るのは現代世界を読み解く補助線にもなるだろう。2018/09/22
刻猫
2
中世キリスト教の論理。信仰と武力の融合。聖書によって聖とされる。神が望むが故に。終末論や贖罪、浄化が頻出するキーワード。異端と異教徒は殺しても罪にならない。むしろ祝福される。2014/03/30
おらひらお
1
2003年初版。再読です。2018/01/26