ちくま新書<br> 教育改革の幻想

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ちくま新書
教育改革の幻想

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  • サイズ 新書判/ページ数 222p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784480059291
  • NDC分類 372.1
  • Cコード C0237

内容説明

二〇〇二年度より新学習指導要領が実施される。この要領がめざす教育改革のねらいは「ゆとり」と「生きる力」の教育であり、それを実現するものが「総合的な学習の時間」である。これらをつなぐ論理は「子ども中心主義」であるが、この教育方針は本当に子どもたちのためになり、学校を再生するに足るものなのか?また、受験や詰め込み教育は本当に罪悪なのか?さまざまなデータを検証し、教育と日本社会のゆくえを見据えて緊急提言する。

目次

第1章 教育の制度疲労(政策担当者の問題把握;これまでの教育改革の成果 ほか)
第2章 「ゆとり」と「新しい学力観」「生きる力」の教育(「ゆとり」をめざす教育の問題認識;「新しい学力観」と「生きる力」の教育 ほか)
第3章 「ゆとり」のゆくえ―学習時間の戦後小史(子どもの「ゆとり」は奪われてきたのか;「勉強の時代」の復活―勉強のしすぎはゆとりを奪ったのか ほか)
第4章 「子ども中心主義」教育の幻惑(「ゆとり」と「生きる力」をつなぐ論理;「子ども中心主義」の教育 ほか)
第5章 教育改革の幻想を超えて(手段を欠いた理想のゆくえ;現実と理想のコントラスト ほか)

著者等紹介

苅谷剛彦[カリヤタケヒコ]
1955年東京生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。ノースウエスタン大学大学院博士課程修了、Ph.D.(社会学)を取得。ノースウエスタン大学客員講師、放送教育開発センター助教授等を経て、現在、東京大学大学院教育学研究科教授。専攻は教育社会学、比較社会学。データの精緻な検証により、教育や日本社会について、鋭く的確な発言をし続けている
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐島楓

22
2002年初版。ゆとり教育に疑問を呈したもの。そもそも基礎ができなければその上に知識を積み上げられない。おそらく文中で小中生の学習時間が年々減っているという指摘の一因はテレビゲームにあると思う(私がその世代なので)。さらなる教育改革が行われるようだが、ケータイゲームやその子自身の学習意欲、教育環境の格差などにより、二極化はますます進むであろう。2014/04/27

rigmarole

8
印象度A-。問題の所在と現実の状況を見失って理想を語ると、教育についての議論はとんでもない帰結を招くもの。当時の行政や諮問委員会が、いかに印象論、「べき」論で「ゆとり」と「子ども中心」の政策を推進していたかがよく分かります。本書のポイントは、個別的な「あるべき授業」の方向性を具体的な方法の説明もないままに制度化してしまい、全教師に同じアプローチを強要してしまうことの弊害。私もかねがね思っていたこと、また、最近読んだ齋藤孝『新しい学力』に書いてあることを、彼は既に15年前の本で言っていたのです。あっぱれ。2017/08/25

すみけん

8
総合学習において、生徒中心に先生は生徒の思考の支援にまわり、教えることをしない、そのことで、生徒の考える力を育む、というのは確かに理想かもしれないが、そのための教師の指導力、判断力は半端なく、そして、生徒が基礎知識を持ちえていないと、授業は成立しない。なんで、そんなこともわからずに改革を進めるのか。早く進めばいいってもんじゃない。本当に子どものことを考えて、この本の最後に書かれた改善を進めてほしい。2015/05/19

shin.y

4
思えばいつの間にか罵詈雑言辞典にでも掲載されていそうな言葉になった「ゆとり」。広義の意味でのそれの第一弾に自分が含まれていたことを思い出す。生活科、の導入がそれであったが何を学んだのかはよく覚えていない。国力による経済競争のあり方はITの急成長によって大きく姿を変えた。それに呼応するように国力に資する教育、その根幹たる指針も大きく舵を切った。その検証確認が本書の主旨だが迷走の結果を見届けたあとで本書を読み直すと著者の慧眼に感服する。論理をひっくり返して反対から見るのがうまいよなこのひと。2015/02/06

Naota_t

3
★3.6 非常にロジカル、良書だった。是非、教員に本書の意見を聞いてみたい。「ゆとり教育」の元凶は、具体で指示しなかった国と、総合教育を取り違えた教員にあるのだろう(7:3くらい)。ゆとり教育の結果、家庭学習や塾の時間は減り、増えたのはテレビを見る時間と、普段勉強しない子供がさらに勉強しなくなったことだったのは苦笑いしかない。そういった事実は学習指導要領海底の議論には出ず、印象論が先行した格好だ。全方位的に改善すべきだと思うが、階層的視点を明確に持つこと、知識伝達の重要性を重視することが優先だと思う。2021/06/07

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