内容説明
容赦なく襲いかかる不況の波、とどまることなく進化する技術…。ものづくりに生きる町工場の人々は、それをどのように受けとめ、どのように乗り越えていくのか?最先端技術に命を吹き込む職人たちのワザと心意気を、旋盤工として、その真っ只中に身を置きながら描きつづけた小関智弘の代表作。鉄の感触や匂いさえも文章に刻みこんだ傑作ルポ。
目次
一本十銭の楊枝―まえがきにかえて
わたしのNC事始め―四十五歳の見習工
カバのあくび―プレス機械をつくる町工場
月とスッポン―金型づくりのむかし、いま
そのまた裏通りを生きる人々―倒産工場の同窓会
仕事の虚と実と―蘇る人たち
オヤジさんの宿命―汚れ、傷つきながら
町工場はどこへゆく―生き残ることの意味
わたしのへその緒―わが父親への挽歌
蟄居するとき―ひとりだけの工場
現場百回―いやらしさとむきあうこと
いまを苦しむ―貧すれど鈍せぬ人たち
必要なのは勇気と…―町工場たのし、かなし
内部応力あるいは鋼の腹の中―あとがきにかえて
著者等紹介
小関智弘[コセキトモヒロ]
1933年生まれ。町工場の旋盤工として51年間働きつづけたが、現在は作家として、執筆・講演などに専念している
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ステビア
16
毎日少しずつ読んだ。技術や機械の話はよくわからなかったけど、色々な職人たちの生き様が書かれてて超好みの作品だった。シブい!2014/08/06
くるぶしふくらはぎ
11
再読。いい作品だなあ・・・と、しみじみ。日本の職人さんの地位向上を望みます!2015/01/31
Yasuhiko Ito
7
著者の小関智弘さんは、直木賞や芥川賞候補にもなったこともあるれっきとした作家だが、同時に大田区の町工場で旋盤工をしているという珍しい人だ。本書は、1970年代後半に登場したばかりのNC旋盤と格闘する話など、悲喜こもごもの町工場風景ルポルタージュエッセーだ。文中にポンポンと工作機械周りの専門用語が飛び出すので、理解しにくいところもあるのだが、僕のような「下町ロケット」に涙している機械マニアには嬉しい。何しろ小説家と旋盤工を兼業している人なんて、世界でもこの人ぐらいしかいないはずだから、とにかく貴重なのだ。2018/10/28
Takao
4
2004年4月7日発行(初版)。単行本は1979年7月20日刊行(晩聲社)。1993年8月30日、現代教養文庫に収録。1978〜79年に雑誌に掲載された文章を収録。ちくま文庫としては17年前、原著は42年前の発行。「春は鉄までが匂った」というフレーズを耳にし、ずっと心の片隅に引っかかっていたのが本書。だいぶ前に購入したいたようだが、なかなか読み始めることができなかった。旋盤など町工場の職人たちが使っている専門用語が難しくなかなかイメージできなかったが、著者の美しい文章には惹かれるものがあった。2021/09/09
どすきん
3
読んだ本に追加する際、いつの間にか「最近読んだ本」に変換されるのは何故だろう。 まぁ、いいや。 友人の娘さんが、私立中学受験の為に学習塾に通っていた頃の話。 国語の問題でこの本が取り上げられていた。 旋盤を見た事も無い、鉄が「モリモリ」削られてゆく様子を見た事も無い子供(に限らず)に、内容は理解できないんじゃないか、と思った。