内容説明
海軍少佐・山本権兵衛は将校西郷従道から、元勲夫人たちの舞踏会への出席勧誘係を命じられた。井上馨、伊藤博文、山県有朋、黒田清隆、大隈重信らの“私”の顔と妻たちの秘められた過去。鹿鳴館を華やかに彩った女たちはそれぞれに…。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Sam
54
著者の面目躍如たる連作短編。西郷従道の命により奔走する山本権兵衛の目を通して混迷の鹿鳴館時代を描く。山本とともに奔走するのは岩倉使節団メンバーでもあった大山捨松夫人。伊藤博文はじめ明治の元勲が片っ端から登場するがメインは妻でありそれぞれの運命や生き様が虚実を取り混ぜながら鮮やかに描き出される。それにしてもなぜ「エド」なのか。解説によれば鹿鳴館が象徴する明治の混沌や矛盾を表すのは“「東京」ではなく、自立した文化をもった「江戸」でもなく、自問しながらたたずむ「エド」でなくてはならない”。見事な解題だと思った。2025/03/12
syaori
33
山田権兵衛が、大山巌夫人捨松と舞踏会へ出席して下さいと明治政界の大立者の奥様方を訪問し、その家庭を垣間見るオムニバスストーリー。井上馨や伊藤博文をはじめとするお歴々は傑物ぞろいで一癖も二癖もある人たちばかり、奥様方の悩みも尽きません。芸者や遊女上がりの方がほとんどなのですが、情が深く、しなやかな彼女たちの生き方は「ただの貴婦人じゃなか、実にえらか奥さん方でごわした!」という権兵衛の感嘆がぴったり。まさに「ああ本当におみごとです、奥さま方」。ザ・日本男児の権兵衛とハイカラな鹿鳴館の取り合わせの妙も素敵です。2016/05/31
ヨーイチ
26
山風明治物で一番のお気に入り。確か劇化されている。商業演劇のチラシを見て「三島の鹿鳴館のパクリかい」位の認識で黙殺。山風にハマる前。鹿鳴館時代の大政治家が夫人を通して描かれる。これだけの大物揃いだと自伝、日記など資料が膨大でその間隙をぬって作者は各人の人物像を浮かび上がらせる。三島の鹿鳴館のモデルとされる井上馨編。最後に行幸が決まり欣喜雀躍するが、この行幸が演劇史で言うところの天覧歌舞伎であったりする。伊藤博文編では川上貞奴が大活躍。有名な貞奴水揚げを行幸の後に持ってくるなんぞ、不謹慎と言うか伊藤らしいと2015/12/05
ken_sakura
22
とても面白かった♪( ´▽`)八犬傳、以前に読んだ甲賀忍法帖と同じくらいとても面白かった。すごいな山田風太郎( ̄O ̄;)口が奢ってしまいそうで心配になる。連作短編集。鹿鳴館の舞踏会に元勲夫人達の出席を促すようにと、海軍大臣の西郷従道の命令を受けた山本権兵衛が大山巌夫人の大山捨松と元勲達の屋敷を訪ねる物語。伊藤博文のダメっぷりが可笑しいε-(´∀`; )2016/01/19
ヨーイチ
17
十五代目市村羽左衛門の出生にまつわる話がいい。山田風太郎は芝居も分かって居る.他には会津に対するスタンスは大切な点であろう。