出版社内容情報
太平洋戦争の激戦地ラバウル。その戦闘に一兵卒として送り込まれ、九死に一生をえた作者が、体験が鮮明な時期に描いた絵物語風の戦記。
内容説明
太平洋戦争の激戦地ラバウル。水木二等兵は、その戦闘に一兵卒として送り込まれた。彼は上官に殴られ続ける日々を、それでも楽天的な気持ちで過ごしていた。ある日、部隊は敵の奇襲にあい全滅する。彼は、九死に一生をえるが、片腕を失ってしまう。この強烈な体験が鮮明な時期に描いた絵に、後に文章を添えて完成したのが、この戦記である。終戦直後、ラバウルの原住民と交流しながら、その地で描いた貴重なデッサン二十点もあわせて公開する。
目次
ラパウル戦記
トーマの日々
ラバウルとの別れ
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
馨
57
これまで読んだ水木さんの戦記モノの、もとになっている実体験・・・これかぁと思い読みました。腕を失われた理由や、生きて返って来られた理由が書かれています。現地の土人の方たちとのふれあいが第一線に出向いている水木さんの安らぎとなって良かったと思います。水木さんのちょっぴり呑気な?軍人なのに軍人らしくないところが、人間らしくて生きたいという欲求が素直に出ているような気がしました。現地で描かれた絵が生々しくて・・戦友の方なんか見ていて悲しくなります。2013/07/30
十川×三(とがわばつぞう)
53
圧倒された。歴史的価値の高い作品。1943年11月から終戦後までの水木二等兵の戦記。上段に絵、下段に文章。▼左腕を失ったが奇跡の生還。マラリアで熱。土人との信頼関係がなければ死んでいた。毎日栄養のある食事を運んでくれたおかげ。▼土人の豊かな生活を知り,住み着こうか悩んだ。もしそうなっていたら,日本の妖怪事情は変わっていた。2022/09/18
おかむら
43
ラバウルの指揮官、今村大将の評伝を読んだので、次は同じ戦地にいた水木しげる二等兵からみた戦争記録を読んでみる。軍隊内でもかなりマイペースな水木さん、毎日古参兵からビンタの嵐。ガ島のような飢餓地獄ではないものの、かなり悲惨な状況に置かれても(部隊が全滅したり、片腕を失ったり)、飄々と過ごしてるようなのに驚く。メンタルの丈夫さ! 自然の美しさに魅入ったり現地の人と仲良くなったりと、どんな状況下でも面白さ楽しさを見つけ出す水木さん。今村均の立派さよりも水木しげるの飄々さの方がグッときたわ私は。2021/09/06
tama
40
図書館本 94年のA5 昭和24-26に書いた水彩と「娘に語るお父さんの」の絵と水木さんが実際に戦地(野戦病院や捕虜収容所)で書いた鉛筆とクレヨン画が一杯!この鉛筆画は境港の記念館で見た記憶がない。さすがの画力!「縄ピー」「朝鮮ピー」「ピー屋の50人行列」など「なかった」と思いたい人には気分の悪いであろう話も。この作品はこの際再版した方がいいのではないかなぁ。絵も貴重だし(残酷描写がない!)。今は、この作品で水木さんが言ってるのと真逆な世界を目指す連中が増えてるからこそ必要だと思う。2016/05/04
トムトム
37
毎日ビビビビーっと殴られ、時には20分間殴られ、初年兵は全員青白い顔をしたノイローゼ状態。こんな状況でも自分を曲げないなんて、水木さんは強い!そんなこんなで水木さんを殴った先輩方を含む登場人物たち、ほとんど戦争で亡くなってしまっている。日本に帰ることはなかった。語り継ぐ人がいなければ、誰も知らない。水木サンに感謝!2019/12/15