内容説明
「もしこの作品に欠陥があるとすれば、それはあまりに面白すぎるということであろう」(あとがきより)。仏頂面の不気味な大佐、奇怪な会見、秘密の鍵を握ったまま息を引きとった老婆―謎めく事件の蔭にひそむ陰謀。短篇小説の形式をとり、一篇一篇読み切りになっているがアシェンデン(モームの分身)という一作家スパイを通じて長篇の体もなす体験小説。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
かもめ通信
24
モーム自身が第一次大戦中、英国の秘密情報部員として活動した時の経験を元にして書いたという“スパイ小説”。山場となるような大きな事件も、手に汗握るアクションもないが、作家と諜報部員という二つの視点から考察するあれこれや、各国のスパイや工作員たちとのかけひきが、個性的な面々の魅力を際立たせるだけでなく、はっきりと語られることのない“全体像”への想像をかきたてるちょっと変わった読み心地の作品だった。2023/07/17
tom
19
【津村のやりなおし世界文学】を読むの7冊目。副題は 「英国秘密情報部員の手記」、だから、スパイ小説だと思って読み始める。でも、スパイ行為はないまま物語は進行する。半ばを過ぎて、ようやくスパイ稼業で出会った人たちの人間模様だと気づく。そうとわかれば、モームはどんなふうに人を描いたのかに関心は移る。でも、私としては、この本くらいの人の描き方で世界文学になるのか?という感じか。津村さんは、「登場人物たちがとても好きだ。こういう話を書きたい」とおっしゃる。実際、津村さんの本の登場人物に重なるところがありそうな。2025/09/01
tama
13
図書館本 装丁が和田誠さんという情報で借りたけど違った・・・。でも内容は面白かった。というか凄く読ませる文章。サマセット・モームお初。翻訳もいいからなんでしょう。シベリア鉄道の話にアメリカ人が出てくるが「マナーは完璧で・・・善良な心を反映し・・・誰にでも進んで親切を尽くし・・・人並み外れて世話好き・・・自己満足は底抜けで」。これ「アメリカという国」の性格そのものじゃないの!?モームすごい!2016/05/01
きりぱい
9
感謝の言葉ひとつもらえないし、助けも望めないがとスパイを依頼された作家アシェンデン。コードネームRと呼ばれる大佐からの指令、見張っているのか見張られているのか、任務遂行に緊迫感があるかと思いきや結構のんびりしていて、そこがまた、事実はそう劇的でもないのだと、モームの実体験から人間観察濃く描かれているのが面白い。毛無しのメキシコ人やハーバート卿の独白が迫力だったり、踊り子ジューリアやケイパー夫人が哀れだったり・・。2010/02/28
ハル
6
作者のモームの実体験が多く含まれてると言われるスパイ小説。連作短編集で、語り手のアシェンデン以外にも様々な個性的な人物が入れ代わり立ちかわり現れる。わりと淡々と描かれてはいるけれど、戦時中の緊張感が全編にわたり漂っていて、ユーモアの中にもスリリングさが入り混じる。終盤、あまりそういうタイプには見えなかったアシェンデンの過去の恋のいざこざにまつわるエピソードと、その恋人と再会してから彼と同行者のたどる結末はまさにユーモラスとスリリングの融合。面白かった。2026/01/17




