内容説明
「願はくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ」日本民俗学の出発を告げる記念碑的作品『遠野物語』の世界を“金属民俗学”と“修験道”の視点から読み解く。山から山へ渡り歩く山伏や聖などの山岳宗教者集団、金掘りや山師などの金属技術者集団、彼らは里に定住した農民の歴史からは忘れられ消される運命にあった。その消された伝説や民俗の痕跡をつなぎあわせ、山神山人の戦慄すべき怪異譚の深層を浮上させる。
目次
佐々木喜善の風景
遠野の民俗
遠野の宗教
金属民俗学
山人の原風景へ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Arisaku_0225
8
『遠野物語』を著した柳田國男に『遠野物語』の原型とも呼べる多くの情報を提供した佐々木喜善氏の考察から始まる本書。「遠野」の伝説、口承、そして数少ない資料を元にそれぞれの信仰と遠野の人々の暮らしを繋げる。遠野と聞くと妖怪や土着の神様ばかりに目が向くが、本書は遠野には金属的な伝説も多いことに着目し、金属民俗学から遠野を見る視点はとても興味深い。2022/09/18
HANA
5
荒蝦夷版。遠野全般の習俗や信仰について扱っている。特に興味深く読めたのは遠野の民俗、死者の肖像画やカッパと子殺し、蓮如上人画伝など死が色濃く漂っており、モノクロの写真と相まって本書に何とも言えない雰囲気を与えている。金属民俗学においては金堀自体よりそれに付随した信仰、太子信仰や座敷念仏が非常に興味深い。黄泉ながらまた遠野に旅立ちたくなった。2010/12/14
紅独歩
2
荒蝦夷版。「遠野=田舎」「佐々木喜善=語り部」という先入観を覆す視点はいま読んでも新鮮。特に著者が提唱したという金属民俗学は柳田の「山人=縄文人」と併せて考えると刺激的だ。2010/09/19
小心
1
モノクロ写真が妖しさを放つ。「死者の肖像画」や蓮如の絵伝、山師と村との関わりなど、興味深い。金山をめぐる利権争いなど、時代が変わっても人間は似たようなことを繰り返しているんだなあと苦笑してしまった。2012/01/05
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- 和書
- 柳田国男談話稿