内容説明
イギリスに遍在する利己心を描いた、といわれるこの大河小説はマーティン老人、ベックスニフを中心に、人間の暗部といまわしさ、そしてこっけいさを徹底して描き、推理小説ともよびうるドラマの展開、高まりのうちに幕をとじる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
91
主人公の帰国を契機に明らかにされる従兄弟ジョーナスの父親殺害疑惑と、剥がされる偽善者の化けの皮。特に前者の謎を暴いていく過程は緊密な筋書きが用意されていてサスペンス作家としての飛躍的な進歩が窺える。この点では側近と共に『最後まで読めば過去最高傑作』と断言した所以も頷ける。大団円で際立っているのは、老マーティンの執拗なまでの怒りとトムの自己犠牲的な寛容さ。トムを女性たちと共に舞台に残し、行く末の言及もせずに他の男性陣を排除したラストシーンは著者にしては異例。利己心を糾弾すると共に寛容の大切さを強調している。2018/03/14
ゆーかり
17
ディケンズ長編6作目(前期の作品)。テーマは利己心。中間部分はイギリスとアメリカの二本立て。後半はサスペンス/ミステリー的部分もあり一気に動きが出た。昭和初期の邦題『千鶴井家の人々』のように、主人公はマーティンひとり(二人?)というよりチャズルウィット家の話と言って良いかもしれない。[ガーディアン必読1000]2018/03/19
秋良
12
【G1000】いや、なんかもう、多弁、多弁、多弁である……前期のディケンズはとにかくよく喋る。マーク・タップリー君もびっくりのマシンガンぶりで、因果応報のラストまで怒涛の伏線回収と力業の大団円。最後は善人トムの幸せな姿を描いて皆のハッピーエンドを匂わせる。古今東西の作品に影響を与えたのか、セーラームーン並みにカップルが誕生しバトル漫画並みにみんな生命力が強くコナン並みに犯人が活躍する。ディケンズの戯画化は漫画ちっく。うーん荒涼館また読もうかしら。2022/02/23
フリウリ
9
マーク・タップリーとトム・ピンチ!老人と遺産問題を主軸に、詐欺に殺人と事件は続きますが、二人のおかげで収まるところに収まりました。例えば「我らが共通の友」に比べれば、エピソードを連ねる古い型の小説(ピクウィッククラブのような)に近いと思われますが、17世紀文化を引き継ぐような「バロック」的な世界観が、とてもよいと思います。なお、オリジナルの三笠書房版は誤字脱字が事故レベルですが、ちくま文庫版では「もちろん」修正されています。二人のような美しい魂(?)をもった人間になりたい…です。1844年刊。92024/10/07
tokko
4
古今東西を問わず、人間のエゴイズムは普遍的なものであると改めて考えさせられた。展開が強引だったり、個性的な登場人物が出てくるあたりは、やはりディケンズですね。2010/10/23
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