内容説明
森於菟は鴎外の長男であり、母は鴎外と離別した先妻である。於菟は、祖母によって育てられ、のち日本の解剖学の権威となる。その於菟が綴った鴎外一家の歴史と真実。一家の柱としての鴎外と父としての鴎外と人間としての鴎外を活写して余すところがない本書は、第一級の資料であると同時に、深く感動をよぶ一個の人間記録である。
目次
1 観潮楼始末記ほか
2 鴎外と医学
3 父親としての森鴎外
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sasa-kuma
24
森家読書年間④ 無条件の愛情を受けることができずに育った於菟。そのせいか、家族を見る目は冷静そのもの。愛のない結婚により生まれ、離婚の際には妻と子を置き去りに家を出ている鴎外。その後祖母に引き取られ、5歳まで里子に出されている。鴎外を恨んでもおかしくない状況だが、そうはならず、矛先は鴎外の後妻である義母へ向かう。家のゴタゴタについては杏奴が書いていた「誰が悪いということはなく、一つ屋根の下に他人同士が暮らすことで起こる軋轢は自然なことである」というような文言がしっくりくるように思う。2016/03/21
Ted
5
'69年12月刊。○鴎外の前妻の子・於菟による随筆。方々に執筆したものの寄せ集めなので所々重複が見られるが縁戚関係が詳しく述べられているので係累の相関を把握するには便利な書。難解な語を用いる点や時々顔を出す独特のユーモア、差別的目線に近いエリート意識などが鴎外の文章とよく似ている。病歴という切り口から一族を概観した「鴎外の健康と死」の章が、解剖学者らしい独自の視点で面白いと思った。茉莉子・杏奴・類など後妻の子供らが持つ父親像は祖父に近いイメージだが、於菟の場合は壮年期の父親のことが語れるので貴重な存在だ。2014/02/02
Gen Kato
4
鷗外の長男による冷静な父親伝、なのだけれど、やはり義母の志けさんに関する記述には抑えがたいものがにじんでいる気が。とにかく言いすぎなんだよな、志けさん…2016/09/23
tkm66
1
スーパー面倒臭い親父、っすね。それを愛読してしまう自分を・・いや、これが<普遍的な文学>なのかしら、ね。2022/11/25
うろたんし
1
めっちゃおもしろかった。時々考証的になって羅列の続くところは詰まらんかったけど、補って余りある鴎外の姿の描写。ますます尊敬する人になった。2014/05/20