内容説明
最愛の妻を失ったボクサーはつぶやく。「…お前に逢ったことだけが、俺の人生の取り柄なんだ…」(「ディア・ベイビー」)。1セント玉を握りしめた餓死寸前の男は「空中ブランコで宇を飛ぶ…」と心で歌い、「生存許可願を書かなければ」と考える(「空中ブランコに乗った若者」)。平凡な人々が演じる思いがけないドラマを描くサローヤンの代表的短篇を選び集めた1冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
81
初期の作品中心の21編の短編。どれもかなり短いが、人生の辛さ、思いがけなさが凝縮されている。サローヤンはアルメニア移民の子で、2歳で父を亡くし、7歳の時から働いて家計の足しにしなければならなかった。そういった状況は『人間喜劇』に詳しいが、『人間喜劇』はそこはかとない哀愁の中にも何ともいえない明るさに溢れている。だが、この短編集には、シニカルで人生への無情のようなものが漂っている。初期の作品が多いということで、サローヤンは、まだ自分の苦しみを十分に客観視できるほどにはなっていなかったのかもしれない。 2019/07/11
秋 眉雄
17
『世間は狭いというけれども、再び会うことがなければ、そのひとたちは死んでいるのである。』たった3ページの作品ですが、『はるかな夜』がとてもグッときました。イイものは、やはりどこか懐かしいですね。大物感をまるで醸し出さないその作風と風貌。好きだな、サローヤン。2017/06/24
zoros
8
短編集。「懐中電灯」「はるかな夜」「冬を越したハチドリ」「ハリー」「戦争」がよかった。虚飾を抜きとったリアルな日常の物語だ。悲しみや温かさは単純だけれど、とても理解できるし深く胸に沁みてくる。 2021/03/14
きりぱい
6
最愛の妻への呼びかけである「ディア・ベイビー」、ディグラン爺さんが温かい「冬を越したハチドリ」に胸がしんとなる。「空中ブランコに乗った若者」の思わぬ哀感や、「自転車泥棒」「羊飼いの娘」も面白い。日常的なようで、思いがけなくもある人生の一面をナイーブにとらえた、はかなくメランコリックがかった短編集。2011/01/06
御庭番
3
サローヤンは、あとがきによるととても日本で愛された作家のようだ。私よりすこし上の世代の方々に愛されていたらしい。今、目につく出版がないのが惜しいしもっと読みたいと思う。短い中にも詰まっていて、たまーに理解できない面白さもある。好きだなぁ2023/09/16
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