出版社内容情報
16年12月、日本は大きな戦争に突入した。戦時下、いっそう質の高い文学活動が展開され、名作が生み出された。「正義と微笑」「帰去来」他12篇。
昭和16年12月、日本は大きな戦争に突入した。「しかし、私は小説を書く事は、やめなかった。もうこうなったら、最後までねばって小説を書いて行かなければ、ウソだと思った…」(「十五年間」)。大戦の進行につれて文化統制が強化されるなかで、太宰ほど質の高い文学活動をした作家は、ほかにない。戦時下に成った作品群を収める。
目次
新郎
十二月八日
律子と貞子
待つ
水仙
正義と微笑
小さいアルバム
花火
帰去来
故郷
禁酒の心
黄村先生言行録
花吹雪
不審庵
内容説明
昭和16年12月、日本は大きな戦争に突入した。「しかし、私は小説を書く事は、やめなかった。もうこうなったら、最後までねばって小説を書いて行かなければ、ウソだと思った…」(「十五年間」)。大戦の進行につれて文化統制が強化されるなかで、太宰ほど質の高い文学活動をした作家は、ほかにない。戦時下に成った作品群を収める。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
72
太宰というと滅びの美学ですが、ここには成功したからの苦悩が描かれています。戦争に入っても小説を書き続けた太宰は本物の作家と言ってもいいでしょう。戦時下の作品ながらも暗さがなく、希望を見たようでした。2020/04/28
優希
46
大戦に突入しても書くことをやめなかったのですね。文化統制が鏡花されても、質の高い文学を届けたのだと思います。戦時下で書いたとは思えない、安定した面白さがありました。2023/04/30
Vakira
45
ちくま文庫の太宰治全集を気長に1巻目から読んでいる。とうとう5巻目読了しました。作品半分も読めば僕だって治さんフリーク。この全集は書かれた順番に収録されておりますので、治さんの作風がどの様に変化していくのか楽しみながら読む事が出来ます。5巻目の執筆時代は昭和16~17年。太平洋戦争が開戦されて、生活の貧しさが書かれる様になってきます。例えば、お酒の配給制。そして、この戦中、自分の生活からの逃避。いやいや前向きに挑戦と呼びましょう。コメディーへの挑戦。治さん自称コメディアンですから。面白くない訳がない。2025/10/29
ころこ
37
『正義と微笑』『女生徒』と比較できる、太宰以外の男性一人称をみつけた。スカッと抜けて、それでいて最後に不安の影が残るので、同姓である自分を励ましてくれると受け取る男性の読者は評価がし易い。他方で、女性の読者はこの単純さに鼻白むのではないか。とすれば『女生徒』の女性一人称も、同性が読むと実は評価が違うのではないかとの疑念が湧く。『帰去来』兄からの実質的な出禁を受けた実家へ10年ぶりの帰郷をする。ジャンルはエッセイになる。『故郷』は一度帰った後に、母の危篤から再度帰郷を果たす実質的な連作になっている。緊張感は2023/04/13
H2A
8
短いけれど女性画家を描いた「水仙」が個人的にベスト。「正義と微笑」も演劇を志す若者の奮闘を日記体で描いてまずまず。ほかにおもしろかったのは「花火」、それから黄村先生ものも「けたちがいの非常識人」ぶりが笑いを誘う。2017/10/08




