内容説明
親友を死に追いやった罪悪感に苦しみ、自らも死を選ぶ「先生」の心の暗部をたどりつつ、透明な文体で、人間のエゴの問題を徹底して追求する『こころ』。互いに理解しえないまま結婚生活を送る健三・お住夫婦を中心に、因習的な「家」制度との矛盾・葛藤を描いて漱石唯一の自伝的小説といわれる『道草』。後期三部作の終曲をなす名篇と、完成された最後の長篇を同時収録。若い読者の理解を助けるため読みやすい活字で詳細な語注を付した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
68
『こころ』と『道草』がおさめられています。『こころ』は高校の教科書でも読みました。親友を死に追い詰めたが故に、自らも死を選ぶ先生の想いが突き刺さります。鞍部の中にエゴが見えるのに、物語に引き込まれました。また『道草』は理解し得ない夫婦、「家」の矛盾が色濃いです。漱石の自伝的な側面が見えるのでしょうか。どちらにしろ、2編とも名編です。2020/05/25
佐島楓
46
「道草」のみ再読。これほど暗い話だったとは。それでも小説の中心を貫いているのは「理」であるようにみえる。絶えず自分自身を分析しながら煩悶するのが漱石の文学である。2016/06/18
tokko
20
初めて読んだのは(御多分にもれず)高校の教科書でした。確か現代文の授業でまったく別の文章を読んでいるときに、こそっとこの『こころ』を読んだ気がします。あまりにその結末(教科書ではKが自殺するところで終わり)がショッキングだったので衝撃を受けた覚えがあります。その割に全体を読んだことがなくて、今回が初読。教科書では削られることの多い「私」と「先生」の出会いや「先生」の思想に触れる部分も結構重要で、後のKの考え方を理解する上でも読んでよかったです。「先生」の奥さん(お嬢さん)との関係も面白い。2017/06/04
あくび虫
7
『こころ』は、あちこちで物切れで目にしてきて、通しで読んだのは今回が初めて。こういう話だったのかとようやく納得。『道草』も含めて、6,7巻あたりに漂っていた、読んでいて癇癪を起しそうなじれったさが軽減されていて、気持ちよく楽しめました。こうして年代順に読み進めると、作品が明らかに円熟してきていて面白いです。今巻はどちらも文句なく読み応えがありました。…読書としては結構なんですけれども、どんどん希望がなくなっていくのはどうした訳なのか。2022/10/09
Kaorie
7
どうしても「こゝろ」を読みたくなって再読。考えたことなど、メモはhttp://klaparen747.blog76.fc2.com/blog-entry-968.html 夏目先生関連のエピソードを色々知ったうえで読む「道草」は、何も予備知識がない状態で読むよりも、本当に夏目先生の自伝なのだなと感じました。鏡子さん、養父母や父母との関係のエピソードもよく分かります。2013/10/08
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