出版社内容情報
ギリシアの理性とヘブライズムの霊性の総合、それに続いて起きる解体――この総合と解体のダイナミズムに注目して、ヨーロッパ思想史全体を描き出す野心的試み。
内容説明
アウグスティヌスからトマス・アクィナスに至って完成した知の体系は、ドゥンス・スコトゥスとオッカムのウィリアムにより解体される。すると、エラスムスやルターが人文主義やプロテスタンティズムを興隆させる。ロックらが近代哲学の基礎を築き、カントとヘーゲルが思想体系を完成させるも、やがてマルクスの社会思想やフォイエルバッハの人間学などで解体される―このように理性と霊性の総合から解体への転換期に新思想が創造されるというダイナミズムに注目し、ヨーロッパ思想史全体を描き出す野心的試み。
目次
1 古代(ギリシア思想の特質;ヘブライズムの思想的特質 ほか)
2 中世(中世思想の構造と展開;中世初期の思想家とスコラ哲学 ほか)
3 近代(ルネサンスと宗教改革の思想;宗教改革から近代思想へ ほか)
4 現代(現代ヨーロッパの思想状況;ヨーロッパ思想の世俗化 ほか)
著者等紹介
金子晴勇[カネコハルオ]
1932年生まれ。静岡県出身。岡山大学名誉教授。聖学院大学名誉教授。専門は倫理学、キリスト教思想史。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士(京都大学)。『ルターの人間学』で日本学士院賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
66
西欧思想史をギリシア的・哲学的「理性」とキリスト教的「霊性」との統合と分離の歴史として捉える本。キリスト教が教義の基礎づけにギリシア的な理性を取り込んだことから始まって、個と共同体の分離、宗教の世俗化により理性も霊性も「深み」を失い人間の自己疎外に至る現代までの流れが理性と霊性のダイナミズムとして捉えられます。皮肉なことにそれは多様な個を捉えようとする人間学、精神の自律の進展の歴史でもあって、それは今後の哲学の役割に対する作者の問題提起とともに今日の我々が受け止めなければいけない課題のように思いました。2023/02/14
かんがく
16
哲学史(理性)とキリスト教史(信仰)を統合して、古代から現代にいたるヨーロッパ思想を概観するという試みであるが、難しすぎてほぼ理解できずに終わった。キリスト教について知らな過ぎて、取っ掛かりがつかめなかったので入門書などでの学習が必要。2023/04/15
うえ
5
ある程度オーソドックスなスタイルで書かれたヨーロッパ思想史。「数多くの小国に分裂していたドイツでは、宗教が地域によってカトリックとプロテスタントに分かれ…その決定が領主にまかせられていたため、個人は必然的に信仰に対して無関心になり、信仰心を世俗的なものに注ぐようになった。たとえば哲学、文学や音楽にほとんど宗教に対するような帰依の気持ちをもって関わっていった。…ここから西ヨーロッパの政治的に、かつ、宗教的に順調だった国々とはまったく相違した学問と哲学への集中がドイツでは起こったのであった。」2025/02/12
Go Extreme
2
古代:ギリシア思想の特質 ヘブライズムの思想的特質 教父思想の特質 アウグスティヌスの思想 中世:中世思想の構造と展開 中世初期の思想家とスコラ哲学 中世初期の思想家とスコラ哲学 トマス・アクィナスの神学体系 後期スコラ哲学の展開 神秘的霊性思想の展開 ダンテと中世文学の思想 キリスト教共同体の終焉と近代への移行 近代:ルネサンスと宗教改革の思想 宗教改革から近代思想へ 近代的自我の確立 啓蒙思想と敬虔主義 ヘーゲルの思想体系 現代:現代ヨーロッパの思想状況 ヨーロッパ思想の世俗化 文化変容と文化史 2021/05/13