出版社内容情報
ポピュリズムが台頭し、変調し始めた各国の民主政。その背景には何があるのか、どうすればいいのか? 来るべき民主政の姿を探る!
佐々木 毅[ササキ タケシ]
著・文・その他
内容説明
ポピュリズム勢力が台頭するなか、変調を来す先進各国の民主政。ヨーロッパ諸国、アメリカ、日本の政党政治の「今」を、第一級の研究者が鋭く分析。来たるべき民主政のあり方を展望する。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hk
17
「EUは非民主的なリベラルであり、欧州ポピュリズムは非リベラルな民主政」という対立構図の言語化が秀逸。我が意を得たりである。「リベラルデモクラシー」として同一視されがちなリベラリズム(主義)とデモクラシー(政治体制)をしっかりと峻別することで一体何と何が角逐しているのかが鮮明になるという好例だ。わけても「民主主義」という定義不明な語句の多用で政治を誤魔化し続けている日本人にとって、本書は良い薬になるだろう。「ポピュリズムとは活況化した民主政」「大連立という一時力がAFDを躍進させた」など示唆に富む内容。2018/12/31
ブルーツ・リー
4
民主主義にとって、ポピュリズムは問題だと言う。 確かにそうだろう。排外主義や差別やヘイトすら助長する思想で、人類にとって益はないように思われる。 しかし、その一方で、ポピュリズムすら「まだまし」でもあるのかも知れないとも思う。 一応、ポピュリズムであっても、民主主義の形態は保ってはいる。問題は、ポストポピュリズムの時代ではないか。 既存の政治秩序が否定され、ポピュリズムすら人々を救わないと分かった時、政治自体、民主主義自体を否定する動きが起こらないか。 そうなった時こそが、本当の意味での人類の危機だろう。2023/07/14
お抹茶
2
2017年の先進国の政治動向を解説。EUの経済政策は右寄りだが,社会的・文化的な側面では非常にリベラルであり,一般的な労働者や自営業者の多くはEUに不満を持ちやすい。イギリスでは,若者:労働党―高齢者:保守党という支持の分極化が顕著になった。日本でもイタリアでも,安定した多数派を生み出すために得票率と政権勢力の議席の差を拡大する選挙制度改革や,首相や官邸の権力強化を促す改革が行われてきた。これは,政治制度への信頼を毀損し,ポピュリズム勢力が伸張する養分を与える。特に中道左派政党の混迷が各地で見られた。2019/12/04
li1y
2
ポピュリズムは多元的価値観を否定する、つまり自分たち以外の意見を聞き入れないこと、また民主制の原則である少数保護であったりする自由主義的な部分も否定するものだとする。 現在の政治システムでは将来世代の擁護する仕組みがないとされる。自分を振り返った時に確かに自分が環境問題のことをあまり気にしないのは、今の高齢者が社会保険とかを気にしないことと同じなのかもしれないと考えると、自分自身が、次世代のことを考えていない、利己的である部分に驚き、難しさを感じると同時に、自分の弱さに失望した。2021/02/15
taming_sfc
1
きわめて平易な文章で書かれたポピュリズム入門書。EU、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、アメリカ、日本などの事例も豊富。平易な文章であるが、理論的には最先端の議論も取り入れているので、大学1年生でも十分に深い理解が望める。2019/04/05