出版社内容情報
一党制でありながら、政権は民意を無視して政治を行うことはできなかった。国民との対話や社会との協働を模索しながらも失敗を繰り返したソ連の姿を描く。
松戸 清裕[マツド キヨヒロ]
内容説明
社会主義国家ソ連は、計画経済を行っていたが、すべてを「国家」が運営しきることはできず、「社会」との協働を模索していた。また、「一党制」でありながら、民意をまったく無視して政治を行うことはできず、民意のくみ取りに多大な労力を費やしていた。それらの試みは、どのように行われ、どのように失敗に終わったのか。歴史上最大規模の「実験」の実態を豊富な資料と内側からの視点で描く異色のソ連史。
目次
序章 スターリン死後のソ連
第1章 ソヴェト政権と民意―「一党制民主主義」
第2章 政権と国民の「対話」
第3章 国家と社会―様々な「協働」の形
第4章 犯罪との闘い―大規模な「協働」の試み
終章 ソ連の「実験」について
著者等紹介
松戸清裕[マツドキヨヒロ]
1967年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。専攻、ソ連史。現在、北海学園大学法学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Toska
12
再読。同著者の前二著がソ連の通史として書かれたのに対し、本書は時代をスターリン没後に区切り、テーマも絞り込んでいるから分析に深みを感じる。ソ連と聞いて誰もが思い浮かべる共産党ではなく、ソヴィエト(本書では「ソヴェト」表記)制度の方に光を当てているのも特徴か。公式な国家機構でありながらいまいち影の薄いシステムだから、こうやって選ばれたのか、こういう仕事をしていたのか、という新鮮な発見がある。2023/10/20
樋口佳之
12
国家の死滅というテーゼにとらわれて無理無理の運営を続けていたのかな。人間の改造なんて期待しないで、ちゃんと機能する市場と政府機構を作るべきだったのでは。/エスタブリッシュの中からゴルバチョフが生まれてくるのだから四苦八苦していた事は確かなんだろうけど。2017/05/20
Shun
8
フルシチョフからゴルバチョフに書けてのソ連式社会主義的民主主義について取り上げたものである。 書籍に言及はないが、冬は長く、国土が広く、かつ人口密度が低いことも国家運営を難しくさせたのだろうと推測する。情報格差や物資運搬で困難があったことを想像するのは訳無い。この書籍を読むまで共産主義、独裁主義といった漠然とした印象しか持っていなかったため、ソ連はどういう形で民意を汲みあげようとしていたか、勉強になった。任期や、政治に対する意見をいかに汲みあげるかという点においては現在の日本への問題提起にもなる。2019/05/06
akiakki
7
主にフルシチョフ期のソヴィエトをハブとした政治参画と行政システムを豊富な実例で解説しています。計画経済、兵器開発、ルイセンコ農法のようないかにもソ連っぽい実験と失敗は一切載っていません。ソヴィエトの社会システムにおける具体的な役割や選挙方法などソ連社会を新鮮な視点で学べます。数字が多々登場しますが縦書きなので読みにくいのが難点。またソヴィエトの活動、選挙、対話etcの実例の分析が「高い達成率と実績には強制ではない民衆の能動的な参加があった」「しかし未達の例もあった」ばかりです。2025/05/14
sasha
7
これ、副題はつけない方がよかったんじゃないか?だって、ソ連邦は崩壊して「失敗でした」となっているのだから。文章が硬くて噛み砕くのに苦労したが、結局は何をやっても国家崩壊へまっしぐらだったんじゃないのかな。フルシチョフからゴルバチョフ登場までを埋める参考にはあまりならなかったわ。2019/05/04