出版社内容情報
イエスの風貌とユーモアは寅さんに類似している。聖書学の成果に「男はつらいよ」の精緻な読みこみを重ね合わせ、現代に求められている聖なる無用性の根源に迫る。
内容説明
真の幸福・人生とは何だろうか?功利性のみが支配する現代の中で、寅さんとイエスとを比較。聖書学の成果に『男はつらいよ』の精緻な読み込みを重ね合わせ、現代が求めている聖なる無用性の根源に迫る。
目次
第1章 「人間の色気」について(寅さんの場合;イエスの場合)
第2章 「フーテン(風天)」について(「ふうてん」という言葉;寅さんの場合―フーテンの寅;イエスの場合―風天のイエス)
第3章 「つらさ」について(寅さんの場合―『男はつらいよ』;イエスの場合―神はつらいよ)
第4章 「ユーモア」について
著者等紹介
米田彰男[ヨネダアキオ]
昭和22年、松山市に生まれる。愛光高校(スペイン系ドミニコ会経営)在学中、神父になることを決意。漂泊の五年の間、今は無き「蟻の町」(東京都江東区)等で働く。その後、信州大学理学部を卒業したが、さらに十数年、カナダのドミニコ会哲学神学院、スイスのフリブール大学等で哲学・神学・聖書学を学ぶ。現在、カトリック司祭、清泉女子大学教授を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やまやま
13
「色気」「風天」「つらさ(痛み)」「ユーモア」を映画の寅さんと聖書のイエスを比べつつ神父が語る「説教」である。「説教」のうまい方の話は漠然と伺っているうちに引き込まれていくが、著者のイエスまた寅さんの紹介ぶりは名調子である。イエスはモテていたとは思うが、一方で最後には振られる寅さんの気持ちもまた「人間の色気」を感じさせるというまとめは秀逸に感じた。風天ぶりは、人の生き方でヨハネのように修験者のように峻厳に生きるだけではなく、喜びを分かち合う自然な生き方でよいのではというおおらかさとして共感度が高い。2021/03/10
袖崎いたる
10
この本、書き上げたかったんだろうなぁ、と思わずにいられない、意志を感じる一冊。正直、店頭で帯文に見つけた「聖なる無用性」の掘り下げは微妙。(読みたかった!)そこは神父のスタンスなのか、哲学者がおこなうような概念の鍛え上げはせず、神の痛みやユーモアの話に繋げている。あとはなんやかやで聖書解釈が進む。それとレヴィナスの顔の話、じみに他者論への理解が深まったかも。それに仏教モデルとキリスト教モデルの違いに関して示唆が得られた、かな。しかし寅さんもイエス様と接続詞くっつけて並べられるなんて、偉くなったもんやで。2019/10/08
まさにい
8
寅さんの映画は全てとは言わないが、ほとんど見ている。できるだけ映画館で見たかったので、古い映画は浅草等や東劇等で見たものだった。高校生の頃は見もしなかった映画なのだが、浪人時代にふと入った映画館で見てファンにいなった。それ以来、寅さんに関する本は結構読んでいる。この本も読みたかった本なのであるが、この前ふと入った古本屋で見つけた。寅さんだけあって、『ふと』というキーワードで、出会いがある。この本、キリストが人なつっこい性格として書かれている。確かにそうなのかなぁとも思う。そして、米田さんの知識にも脱帽。2023/05/21
今庄和恵@マチカドホケン室コネクトロン
7
寅さんへの知識がまったくなく、イエスと繋げられたらそうなのか、と思うしかない。日本人にはイエスより寅さんのほうが馴染みがあるであろうから、イエスの理解のために寅さんという素材を使ったのか。となると、誰か、ではなくて、何が、となってしまうね。イエスを選ぶか寅さんを選ぶか、それぞれから得たものを認めればいいということで。2019/11/30
sawa
7
★★★☆☆ 寅さんとイエスが似てる…?「フーテン」、「つらさ」、「ユーモア」。なるほど。キリスト教について全くの無知なので、楽しめるか心配だったけど、優しい説明で分かりやすかった。司祭であり大学教授である作者の寅さん愛がすごく伝わる。寅さん賛歌。とにかく「男はつらいよ」が観たくてたまらない。名シーンの記述には、実際の映画を思い出して涙ぐんでしまった。(図)2013/03/27