出版社内容情報
「自己」が最も輝いていた近代が終焉した今、時代を映す精神の病態とはなにか。臨床を起点に心や意識の起源に遡り、主体を喪失した現代の病理性を解明する。
内容説明
今、「自己」は大きな岐路に立たされている。「自己」が最も輝いていた近代(モダン)は終焉し、危険を孕みつつ必要とされた青年期もその役割を終えた。「自己」はこの先、どこへ向かうのだろうか。心や意識の起源に遡り、言語や神話の意味を読み解きながら、メランコリー、スキゾフレニアなど臨床での知見を踏まえ、深い思考を紡いで到達したポストモダンの精神病理学。
目次
第1章 〇・五秒の闇―いかにして意識は立ち上がるのか
第2章 世界が割れ、自己が生まれる―まなざしの到来
第3章 言語のみる夢―他者の呼びかけ
第4章 ピュシスとノモス―はじめに何が廃棄されたのか?
第5章 モダンとは何か―個の系譜学
第6章 メランコリー―死せる母
第7章 スキゾフレニア―最後に起源が目覚める時
第8章 さまよえる自己
著者等紹介
内海健[ウツミタケシ]
1955年東京都生まれ。東京大学医学部卒業。東大分院神経科で臨床に従事。帝京大学医学部精神神経科教室准教授等を経て、東京藝術大学保健管理センター准教授。人間学的精神病理学に基づく透徹したまなざしで臨床に携わりつつ、哲学的な視座から人間精神の時代変遷にも鋭く斬り込んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ポカホンタス
5
私は年来の内海ファンであり、この本も楽しみにしていたが、いざ読みはじめるとどうも面白くない。読む前から結論がだいたい見えてしまう。多方面への参照がありそれはそれで興味を惹くが、それでも大筋が見えてしまうことには変わらない。内海先生の論文にいつもみられる、スリリングな跳躍がないのである。これは一重に、<選書>という制約ゆえであろう。内海先生の文章は、選書や新書には似合わない気がする。2012/06/17
釈聴音
3
逆説的に言えば、「何故私は狂っていないのか?」という問いが必要な時代が現代(モダン)ということなのであろうか。2012/05/29
抹茶ケーキ
2
ポストモダンにおいて自己はどうなるか。前々世紀を特徴づける精神病はメランコリー、前世紀はスキゾフレニー、現代はトラウマであり、現代という時代は「神の死」の喪の作業の最中とのこと。いかにも精神分析っぽい行論で、ジジェクの『厄介なる主体』とかを思い出した。生きる意味がない「から」、人を殺す(自殺するなど)になって、なぜ「にもかかわらず」につながっていかないのかって話が最後に出てきたけど、そこが一番面白かった。2016/06/05
やっちゃ
2
某大学の入試問題にあり気になったので。「普通ならば人は状況に応答して意思を持つ」とカントの「自由」の説明後に記述があった。しかしそもそもカントの「自由」が特殊ではないのかと考える自分にとってはこの記述は違和感を感じた。なぜ急に引き合いに出したのか??飛ばし読みだったのでキチンと読めなかった。勿体無いことをした。2016/02/03
さ◯てんだぁ ver.NEET
1
興味深く読めて面白かった。モダン(あえてこの用語を使う)における自己の在り方を、精神科医である著者の知見を用いて論じた一冊。現代におい不安定化し、存立根拠を揺るがせにされた自己の概念を、決して個人的な問題として矮小化せずに論じている。ガチガチの専門書ではないが、読み通すのにはある程度の哲学や神話の知識が必要2013/08/27