出版社内容情報
治安維持法下、河合栄治郎、尾崎行雄、津田左右吉など思想弾圧が学者やリベラリストにまで及んだ時代、その弁護に孤軍奮闘した海野普吉。冤罪を憎んだその生涯とは?
内容説明
「誰のために、何に対して戦うのか。人間として守らなければならない自由とは、人権とは何か、それを護るためにどう生きるか」弁護士として渾身の力をこめてそう問いつづけた海野普吉(明治18年~昭和43年)。昭和の時代に、冤罪を憎み、言論弾圧と戦った、ひとりの弁護士の活動の軌跡が今を生きる私たちに問いかけるものとは。
目次
静岡大君のセントヘレナにて
心に種子は播かれた
禍福はあざなえる縄のごとし
自白は証拠の王か
治安維持法のもとで
政治が思想を裁くとき
太平洋戦争はじまる
ポツダム宣言―外からやってきた改革
新憲法と人権
司法の独立が問われるとき
経済優先の時代に
生涯を野に在って
著者等紹介
入江曜子[イリエヨウコ]
1935年東京に生まれる。慶応義塾大学文学部卒業。作家。著書に『我が名はエリザベス―満洲国皇帝の妻の生涯』(第八回新田次郎文学賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鯖
21
今期朝ドラの雲野先生のモデル、弁護士海野普吉の評伝。朝ドラでは出版から1年経ってるから時効成立で無罪としてた事件、元は津田左右吉の皇国史観に関する事件だったんだなあ。裁判所からの呼び出しで公訴棄却が言い渡されたとのことで、一審では神武から9代までの天皇の存在を否定した書物のみ有罪だったそう。今だったら思想は裁けず司法審査の対象にならないで終わりだけど。あそこらへんの舌禍事件全部海野先生が担当してらしてはえ~ってなる。山川均が下獄を引き延ばそうと奔走する海野に藤沢から牛乳届けにきたのが大根エピかな。2024/06/19
ア
4
歴史学者などではなく作家さんによる著作であるためか、ファクトの確認としてはやや読みづらい(正確な結論や、行為の主体がよく分からないところがある)。が、朝ドラ「虎に翼」にも海野先生として登場した弁護士・海野普吉の生涯、おもしろかった。著名な裁判に晩年まで多く関わっており、すごいの一言。革新陣営の人々とのネットワークも気になる。2024/12/29
takao
2
ふむ2024/12/13
sasha
0
日本が軍国主義に傾倒して行った時代、治安維持法という悪法の下に起訴された人たちの支援をし続けた弁護士がいた。その海野を支えた妻のアサノが魅力的だ。文章の読み難さが非常に残念。誰かリライトしてくれないだろうか。2011/11/03
koji
0
少し読みにくい文章で引っ掛かりながら読み終えました。所謂人権派弁護士の一生です。戦前から戦後の著名事件にかなり関わり、その反骨精神は生涯変わらなかった点が特筆ものです。それ以上に、食後茶碗にお茶を入れて入れ歯を洗うなんていう人間臭さの記述が何とも言えません。2011/10/13