内容説明
そこにしかない、まちの味。東京・京都で交わされた、「いま遺したい味」をめぐる往復書簡。土地を守り、語る24の店。
目次
二〇一九年(東京「神田まつや」にて;京都「上七軒ふた葉」にて;東京「たぬき煎餅本店」にて;京都「鶴屋寿」にて;東京「しみずや」にて ほか)
二〇二〇年(東京「四谷志乃多寿司」にて;京都「ひさご寿し本店」にて;東京「隨園別館新宿本店」にて;京都「キートス」にて;東京「シンスケ」にて ほか)
著者等紹介
平松洋子[ヒラマツヨウコ]
1958年、岡山県倉敷市生まれ。東京女子大学卒業後、国内外の各地を取材し、食文化や文芸をテーマに執筆。2006年『買えない味』でbunkamuraドゥマゴ文学賞、12年『野蛮な読書』で講談社エッセイ賞受賞
姜尚美[カンサンミ]
1974年、京都市生まれ。まちと味の関係に興味を持ち、書籍や雑誌で取材・執筆を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kei
109
多読していて、東京出身だと思い込んでいた平松さんが、岡山と知る。九州出身だと思い込んでいた姜さんが、京都の人と知る。今ごろです。18才から40年在京の平松さんでも、在日でありながら、姜さんは古い街にあって、どちらも、どこかしら他者の視点。かえって客観的に、あたりまえに存在するものの価値を知りうるのかもしれません。取り上げられたお店は有名で、とりたてて新鮮味はないものの、両者の限りないリスペクトはよくわかります。あえて、往復書簡形式にせずとも、大丈夫ですよぉ、とは感じましたね。2021/07/12
ぶち
109
平松さんが東京の遺したい味を、姜さんが京都の遺したい味を書簡というスタイルで紹介し合ってくれます。 遺したい味の店の魅力や歴史も紹介してくれています。東京、京都のそれぞれの土地の食文化や時代背景も垣間見せてくれます。お二人が取材したお店のご主人たちの言葉にも含蓄があります。 姜さんの後書きにもあるのですが、選ばれた味はお二人の日々の暮らしにしっかりと根付いた味なのですね。自身の暮らしに必要な味を、自身が暮らす土地のお店に求める。その味が結局は遺したい味になっていくのだなぁ、と感じ入ったしだいです。2021/03/30
アキ
106
題名ほど偉そうな話しではなく、生活に根ざす料理人の味。東京は平松洋子、京都は姜尚美が2019年から2020年にかけて1ヶ月毎に交互に往復書簡と共に店舗を紹介しあっている。たかだか12店舗ずつではあるが、どの店も歴史があり土地に強く結びついている味ばかり。写真も美味しそう。「隨園別館新宿本店」張本氏「高級な店ってつくろうと思ったら誰でもつくれちゃうと思うんです。でも歴史の深い店はすぐには絶対につくれない。」今まで遺っている店はそれだけ店の人の思いが強いのですね。平松さんと姜さんのあとがきがいい味だしてます。2022/12/01
fwhd8325
82
遺したい味。このコロナ禍で、閉店された老舗が沢山あります。行っておけばよかったと後悔することもあります。東京は平松洋子さん、京都は姜尚美さんによる往復書簡です。まだコロナが発生していない時期に始まり、途中からコロナ禍の飲食店への取材となり、結果的に遺したい味が際だったように感じます。「京都一文字屋和輔」の章で、疫病流行時に始まったこと、飲食店の始まりが書かれていますが、この環境下ならではの内容となり興味深い。2021/07/20
よこたん
57
“遺る味とは、変わらない味ではないでしょうか。私は、そのまちに暮らす人が、「そうそう、これこれ」と言い合える味が遺っていってほしいと思います。” もう、頷くばかり。長らく美味しさを提供し続ける、東京と京都のお店を、平松さんと姜さんが紹介し合う往復書簡。写真はいずれも年季の入った飴色の世界。しっとりと馴染みこんだその店ならではのいい匂いが漂ってきそう。「風邪ひいたらけいらん食べてすぐ寝る」お約束のけいらんうどん。道明寺が白い桜餅。まちのパン屋さんのドックパン。うどん屋さんの中華そば。食べたいものだらけ。2021/04/27