内容説明
四つ葉のクローバーといえば幸福の印。いつからか日本に輸入された認識で、私たちはもし絵の中に描かれた人物が四つ葉のクローバーを持っていたら、それは幸福の印だというふうに理解することができる。西洋絵画の世界にも、じつはこのような「印」が存在する。「アトリビュート」という絵の中のさまざまな小道具である。本書は西洋絵画のこのからくりの重要なポイントである「アトリビュート」を考える入門書である。
目次
第1部 西洋絵画の鑑賞入門―アトリビュートってなんだろう?(ヴィーナスの手には薔薇―神話を主題にした作品を考える;なぜ聖母マリアには百合なのか?―キリスト教主題の作品を読み解く;“自由”を表す女性像には帽子―「擬人像」を理解する;ひとつのアトリビュートからひろがる世界)
第2部 基本のアトリビュート58(アイリス;アザミ;頭;石;犬 ほか)
著者等紹介
木村三郎[キムラサブロウ]
1948年東京生まれ。東京大学大学院修了。パリ第4大学文学博士。コレージュ・ド・フランス客員研究員を経て、現在、日本大学芸術学部教授。専攻は西洋美術史。訳書『ダヴィッド』(1987年、美術出版社)により渋沢・クローデル賞受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
363
第1部こそヴィーナスの薔薇や聖母マリアの百合など、アトリビュートとその典拠を語っているが、第2部(ほとんどはここ)はもうアトリビュート事典といった趣き。つまり本書は読物としてではなく、事典として携帯すべく企画されたものかと思われる。そして、最初の数葉以外は絵の写真がモノクロームなのでわかりにくいのも残念である。また、私にカトリックの教養が欠如しているために、ダ・ヴィンチやボッシュが描いている聖ヒエロムスや、アッシジの聖フランチェスコならともかく、聖バルトロマイや聖バウォにいたってはお手上げである。2021/03/10
A Y
7
前半ではその人物や神に対して何の物体(植物、動物、道具etc…)が描かれるかの説明。後半では物体の示す意味、またそれによって誰が描かれているのか、どの物語のどのシーンなのかを、実際の絵画付きで端的に説明。中野京子さんの本を読んでからアトリビュートに興味を持ち読んだが、なかなか面白かった。でも、それってその時だけの解釈では?思うマニアックなものもあり、もっとたくさん知識があるほうが楽しめるんだなと、奥深さを感じた。★★★☆☆☆2017/09/08
Akito Yoshiue
7
非常にわかりやすく説明されている上、巻末の参考文献、参考サイトの案内も充実しておりとても勉強なる。2016/08/08
viola
7
アトリビュート入門書として最適。ギリシャ神話、キリスト教、文学的な知識があれば殆ど知っていることばかりですが、最近西洋絵画に興味を持ち出したという人にはもってこい。シンボルは研究で相当事典やら専門書やら読みあさっていたので、巻末のリストもほぼ読んでいたことに驚き。……ってことは、このリストから読んでいっていたら楽だったなぁ。外国語文献も網羅されていて嬉しい。2012/04/15
はなはな
6
絵画鑑賞は好きですが描き込まれた物から意味を読み解きする知識はほんのすこししか無かったので、ここでいちど学習を!と選んだ本。西洋絵画の人物の持ち物や背景の事象が持つ意味を代表的なものに絞って解説してます。最初にアトリビュートとはどういうものかの概論もあって入門編とハンドブックを兼ねた手軽な本で選んで正解した。次回の展覧会では手にしながら鑑賞したいです。2015/01/17
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