内容説明
最高級テーラーの名声を一顧だにせず、古陶磁器の収集・研究からその再現を目指し、類例を見ない愚朗焼・野獣陶碗の孤高の作陶世界を完成。一方、絵画・作庭、そして大名時計のコレクションなど、趣味的世界で奇人の名をほしいままにした上口愚朗。近代日本の陶芸史の中で、最も波瀾に満ちた時代に、終始一貫自分の道を駆け抜けたその生涯をたどる。
目次
愚朗という男
陶狂の履歴書
愚朗天宿の家とスネモノ会
個展のあとさき
もの申す
古陶再現
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
sheemer
21
ずっと前に陶芸の師匠が紹介してくれて読んだ本。表紙写真の男性、半裸でメガネを上下逆にかけ、抹茶椀からストローで茶をすすっている。破格も破格、大破格の茶人・作陶家である。上口中等洋服店というヒトを食った超高級洋服店を突然閉め、あろうことか西の破格・川喜多半泥子に師事?し陶芸家となった。谷中の洋服店の向かいの土地を千坪ばかり買ってそこの土で作陶し、半泥子も舌を巻くような「野獣陶」を作った。年に一度、一流人士を招いて茶会を遊ぶ。生前会ってみたかった。大名時計博物館は彼の収集品。行けば薮の中にもっそりと、あった。2025/12/25
秋津
1
昭和期に活躍された陶芸家の物語。回る茶室を構え、「野獣陶」を次々と産み出し、「模作伝統」に噛み付き続ける「野人」と、焼物を「化学的」に見つめる研究者のような側面があるのを面白く拝見。「私の最後の目的は「砧青磁」」という言葉も、意外なようで緻密な研究と実践を繰り返す彼なら別にそうでもないなとの読後感。同業者について「ニセそこねを、またニセそこねする現代の工人達は、大芸術家でない」と批判する一方、「陶芸評論家には、カンだけに頼っている人が多すぎる」とも主張されており、評論家ではないですが、反省しなきゃなーと。2014/10/02




