内容説明
中国語は漢民族の言語として時代とともに歩みつづけてきた。中国語を書き表わすために、人びとは漢字という文字を創りだした。漢字が表わす“形”“音”“義”そして“文法”は、その長い歴史のなかでどのように姿を変えてきたのか。人びとは自らのことばをどのようなものとしてとらえてきたのか。古代から現代に至ることばの変遷と探究の歩みを、文化史的な視点から描きだす。
目次
第1章 漢字の“形”のはなし(はじめに―中国語と漢字;漢字の変遷―甲骨文から楷書まで;字書の編纂の流れ―部首法を中心に)
第2章 漢字の“音”のはなし(音韻学の夜明け;古代中国語音を蘇らせる資料たち;中古音から唐代・現代音へ)
第3章 漢字の“義”のはなし(義書の編集―古代語の収集と整理;語彙の諸相)
第4章 中国語の“文法”のはなし(中国語の基本的な文構造;文法研究の夜明け前;文法研究の夜明け;文法研究の創成;表現法の移り変わり)
著者等紹介
大島正二[オオシマショウジ]
1933年、東京に生まれる。1963年、東京大学大学院修士課程修了。専攻は言語学・中国語学。北海道大学名誉教授・二松學舎大学客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サアベドラ
13
中国語の歴史というよりは、『説文解字』、『広韻』など中国語学における重要な書物の紹介と解説がメイン。紀伝体的というかなんというか、エピソード多めでダラダラと書いてあって散漫な印象を受ける。また、字体、字音、字義、文法と項目ごとに章立てされており、各時代の中国語の姿をイメージしにくい構成になっている。中国語史を扱った本は貴重なので、もうちょっと練って欲しかったというのが正直なところ。2013/10/01
Hatann
10
中国語を書き表す漢字について、形・音・義・文法の歴史を各種文献とともに素描する。表意文字としての性格から形・義・文法について整理されることは想定の範囲内だけど、音について音節を声母と韻母に分けて漢字で漢字の音を表す反切という方法が南北朝時代から発展してきたことは興味深い。押韻に厳しい中国詩の作成のために発展したが、標準語の形成にも役立ったのだろう。興亡の激しい中国では地域方言のみならず社会方言も小さくなかったと思われるので、本書で語られる中国語の位置づけをはっきりさせてもよかったかな。類書も少なく、良著。2022/01/10
きゅうり
6
拾い読みだけど、中国語の成り立ちやどんな研究がされてきたのか分かって興味深かった。韓国語のように音だけで表そうとしたことも…魯迅が漢字を批判していたことも…大量に同音異義の文字が大量にある中国語をどうスマホで文字入力するのか気になってきたぞ?やっぱりピンイン入力なのか2024/11/29
富士さん
5
再読。何々語の歴史というのは数ありますが、これに勝るものは知りません。ただの雑学集であったり、意味や音韻や統語が体系なく突っ込まれていたりするものが多い中、本書は昔からの形・音・義に着目することによって、わずか300ページ程度で、しかも分かりやすい言葉で、中国語の来歴を体系的に描くことに成功しています。これは、古くからの自言語に対する中華文明の洞察が、少なくともヨーロッパ言語学の猿真似よりはるかに優れていることを証しているように思います。そして、これは言語史著述のひな型としても学ばれるべきだと思います。2018/04/17
ヴィクトリー
4
漢字の形・音・義と、文法について、それぞれの研究を古典的な書物の紹介を中心に解説している。中国語には表音文字が無かったために、漢字の音の表現に面倒臭そうなことをしている様に見えることや、中国語が孤立語で文法的な機能が形態的に現れないせいか、文法の研究は近代に西欧の影響を受けるまでほぼ起こらなかったと言っていいほど遅かった、とかについては面白く読めた。が、全体的な時代による変化や、地方間の言葉の違い(一応方言についての話もあるけれども、それを扱った書や研究の紹介が中心)、と言ったことはよく分からなかった。2014/09/30
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