内容説明
恋によって、人は人生のあわれを知り、生活の美しさを知る―。千年を超えて、日本人の伝統的な美意識の中に生き続けた、王朝社会の恋の理想とは…。稀有な風俗や数々のエピソードをちりばめながら。
目次
序の章 見ずに始まる恋
第1章 お行儀のいい結婚
第2章 通う男の夜ごとの辛苦
第3章 やすらはで寝なましものを
第4章 恋の名告りの意義
第5章 出会いと再会
第6章 盗まれてきた妻
第7章 女の正体を覗き見る
第8章 女を支配する権利
第9章 恋の理想を具現する
終章 恋の嘆きの定型化
著者等紹介
西村亨[ニシムラトオル]
1926年東京の生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。国文学を専攻。在学中から折口信夫に師事し、古代学の継承と王朝の和歌・物語の研究に努める。慶応義塾中等部教諭を経て、1970年大学文学部に移籍。74年教授。80年文学博士の学位を取得。89年退職して、名誉教授となる
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感想・レビュー
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xuxu
1
著者は折口信夫の弟子。王朝の恋を「かよひ」「よばひ」「かいまみ」などのことばを軸に、民俗学的視点も交えて語る。「王朝びとの恋」と銘打ってはいるが、言及は王朝時代にとどまらない。ルーツを求めて神話の時代、万葉の時代にまで遡ることもあるし、逆に名残としての近現代の風習・風俗にも触れることもある。この辺りは民俗学の様相を呈していて、文学の視点しか知らない目には新鮮で面白かった。目から鱗だったのが「いろごのみ」の意味。好色とは違う、男の理想像を表した言葉でその究極が光源氏。そして正妻に嫉妬されるのがイイ男の条件。2018/06/10