出版社内容情報
いま世界的な規模で「民主主義」の理念が後退し、国家による軍事力行使(戦争)が正当化・強行され、人々への暴力・抑圧が深刻となっています。これまでも世界の多くの地域では、米国をはじめ大国による武力行使が強行され、あるいは軍事独裁政権が民衆を抑圧する体制が存続してきました。しかしそれらは「民主主義の理念に反するもの」として批判の対象となり、実質的な「民主主義」を発展させ、戦争を制限・禁止していこうという理念は共有される方向にあったと思います。ところが近年、ロシアやイスラエルに端的なように、その歩みが逆転し、「民主主義」の理念の共有そのものが危うくなってきています。差別と分断があおられ、社会の対立が深まる背景には、資本主義の新自由主義的グローバリゼーションによって各国で一気に広がった格差と貧困が根底にあること、巨大IT企業が私たちの生活のすみずみまで猛烈なスピードで浸透してきたこと、SNSの普及などが挙げられます。今号では、こうした現在の戦争と「民主主義」をめぐる国内外の状況について特集しました。排外主義を競ってあおるような結果となった参院選が浮き彫りにした日本の現状のほか、トランプ政権下の米国や、ドイツについても取り上げました。資本が暴走を始めた世界にあって、これに抗う世界各地の闘いも紹介しながら、破局的な未来を避け、平和な社会を築くために私たち一人ひとりがやるべきことは何か、考えます。
【目次】
グラビア 矢臼別平和資料館を訪ねて;インタビュー 佐々木寛(新潟国際情報大学教授) グローバリズムがもたらした分断と排外主義;石橋学(神奈川新聞) 包括的な人種差別撤廃法の必要性;インタビュー 山本みはぎ(不戦へのネットワーク) 「武器を作るな、配備するな、輸出するな」の声を上げよう;三牧聖子(同志社大学大学院教授) トランプ2.0と民主主義、平和の行方;木戸衛一(大阪大学招へい教授) 〈反・反ユダヤ主義〉というドイツの宿痾;インタビュー 内田聖子(PARC共同代表) 人権や民主主義に貢献する技術を追求する営みにしか答えはない;インタビュー 岸 栄佑(ゲストハウス「WIND VILLA」オーナー) 「宣誓書」は戦争犯罪に加担しないための意思表示です;レポート 「笹の墓標強制労働博物館」と「矢臼別平和資料館」;レポート 祝園弾薬庫増設工事 「住民説明会」と着工抗議行動;前田朗(朝鮮大学校法律学科講師) 取調拒否権が刑事裁判を変える―冤罪防止のための黙秘権保障;康玲子 「時代の曲がり角で」 共に生きる私たちに;青柳 純一(金起林記念会共同代表) 韓国・大統領選挙と参院選を終えて;