内容説明
最愛の彼女を喪い、無意味な人生を送っている春野律。彼女の死から、他人の顔にモヤがかかり、その色で感情がわかってしまう「心視症」に苦しんでいた。そんな律の前に後輩の市川麻友が現れた。なぜか、彼女の顔にはモヤがかかっていない。麻友は律を更に驚かせることを言った。「知らない人に追いかけられているんです」ストーカーに殺された彼女の面影を重ねた律は、麻友を助けようとし…。この出会いで、あの時から止まっていた時間が再び動きはじめる―!アルファポリス第5回ライト文芸大賞青春賞。
著者等紹介
葛城騰成[カツラギトウセイ]
2020年から執筆活動開始。「瞬間、青く燃ゆ」がアルファポリス「第5回ライト文芸大賞」で青春賞を受賞。改稿を経て出版に至る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
木立花音
7
色が見える彼と色が見えない彼女の物語。 印象的な冒頭から真相を暴露しながらテンポよく展開していく前半部と、二人が抱えた問題と向き合いながら、過去との決別をしていく後半部分の穏やかさとの対比が印象的でした。 登場人物全員が、(まあ、一部の絶対悪は除くとしても)常に相手の気持ちになって行動している。優しい気持ちになれる物語でした。 前を向いて、歩き始めた彼らに幸あれ。2024/06/09
紫音みけ
5
前半はサスペンス風味、後半は青春恋愛に特化した一粒で二度おいしいお得な一冊。登場人物たちの心の機微が丁寧に描かれており、思春期の瑞々しい彩に溢れた素敵な物語でした。読後に前向きな気持ちになりたい人はぜひ。2024/06/13
遠宮にけ❤️nilce
3
キャラクターそれぞれが相手を大切にしながらも自分の感情にとことん正直に向き合っていく姿が好きです。叶わない思いをもきちんと大事に抱えたまま生きていく。無理に折り合いをつけようとしない不器用なまっすぐさが愛おしいのです。彼らの間では「ありがとう」という言葉が何度も行き交います。相手の存在に感謝する。相手の喜びを想像して行動する。かつて自分を愛してくれた存在が(それがたとえ死者であっても)彼らに寄り添い、力づけて、思慮深く、強い存在に育ててきたのだと感じます。素敵な人でありたいと背筋を伸ばしてくれる物語です。2024/06/02
たこまんま
1
悪くはないが底が浅かった印象。前半のvsストーカーパートで各人の事情を明かして感情移入を促しているのは◯。ただ犯人を「無敵の人」として切って捨ててるのがどうも浅慮な気がした。凶行に及んだ時点で同情の余地がないのは明らかだが、それまでの事情も聞いているのだからもう少し何かあっても良かったのでは?どうもドライな印象を受けた。後半の恋愛パートは一転して前向きで瑞々しい話になり、その点は良かったが…どうも展開的に微妙に感じる点があり、そこで登場人物達も薄く感じてしまった。2024/10/13