内容説明
母親との関係がうまくいかず、函館にある祖父の家に引っ越してきた少女、理都。周りに遠慮して気持ちを偽ることに疲れた彼女は、ある日遺書を残して海で自殺を試みる。それを止めたのは、東京から転校してきた少年、朝陽だった。言いくるめられる形で友達になった二人は、過ぎゆく季節を通して互いに惹かれ合っていく。しかし、朝陽には心の奥底に隠した悩みがあった。さらに、理都は自分の生い立ちにある秘密が隠されていると気づき―アルファポリス第6回ライト文芸大賞「青春賞」受賞作。
著者等紹介
東里胡[アズマリコ]
函館出身。2023年「感情ミュート」でアルファポリス第6回ライト文芸大賞「青春賞」を受賞。改題、改稿の後本作で出版デビュー。「君といた夏」でアルファポリス第6回ほっこり・じんわり大賞大賞受賞。第9回小学館ジュニア文庫小説賞にて大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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有
40
母親を軸にまわっていた理都の世界が、朝陽との出会いからどんどん広がっていく。まさに青春。函館の風景や空気感が目に見えるみたいだった。絶望の中読む海の冷たさ、月明りの下でほのかに灯る恋、小さな窓から眺める夏の花火の高揚感。終わりに向けて明かされていくお互いの過去に、あの時あの場所で出会えたのが理都であり朝陽であったことの必然を思った。誰かを助けることが、自分を助けることに繋がる。たとえ傷付け合うかもしれなくても、心を見せ合うことでしか見られない世界がある。開いた心であの海にいる二人が、とびきり眩しかった。2024/06/18
お咲さん
11
自分が高校生のとき、まさにリツと同じ心境や境遇で、私自身、同じことに悩み、苦しんできたことをすごく思い出した。母親になるとわかることも若いうちではわからなくて、必要以上に苦しんでしまう。言いたいことが言えないのは苦しい。息ができない現実もがいて、逃げ道を探す。でも逃げられなくてまた絶望する。そんな中でこの苦しみを理解してくれる人との出会いは世界がすべてひっくり返るほどの熱と衝撃を与えてくれる。思い悩んでいる人の背中を押してくれる優しい物語。函館の風景がわかったら、もっと臨場感あったろうなあ2024/06/27
遠宮にけ❤️nilce
9
母親から憎しみを向けられていると感じる。かと思えば心配、償いのような望んだようではない形で愛を押し付けられる。家族との混乱を学校の誰にも知られたくない、普通でいたいと願う気持ち、私が悪いんだと背負い込んだ理都の罪悪感が痛いほど胸に迫った。 内側でそっと凍らせた理都の心の扉をノックし続ける朝陽。そうするに至る彼の事情、乗り越えなくてはならない壁もまた苦しい。 読後、登場人物それぞれの感情が傾れ込み、嫉妬は押さえ込むほど爆発して大切な人を傷つけてしまうのだなあと思うなどした。……めっちゃ泣いた!!!2024/07/01
木立花音
7
伝えたい言葉って、案外素直に言えないよね? そういった、思春期特有の葛藤を、主人公である理都の姿を通して描かれているのが印象的でした。 母親との確執。親友と同じ人を好きになってしまう。自分の恋心を、うまく伝えることができない。 伝えたいのに伝えられないもどかしい感情を、常に傍らにいて支えながら、うまく引き出してくれたのが朝陽だったんじゃないかなと。 しかし、そんな朝陽にも隠していた悩みがあって? 支え合う関係が、朝陽→理都から理都→朝陽へと反転して描かれる後半パートは、2024/08/14
紫音みけ
6
互いに傷を抱えた少年と少女が出会う青春物語。自分の本音を常に押し殺そうとする主人公の心情が切ない。後半は彼らに”弁解のチャンス”があって本当に良かった。舞台である函館の情景も美しい珠玉の一冊です。2024/07/07