著者等紹介
永井利幸[ナガイトシユキ]
1963年、北海道生まれ。道都大学社会福祉学部卒業後、旭川市の知的障がい児入所施設で早期療育を担当。95年7月から当麻町母子通園センターで当麻町・比布町・愛別町・上川町の乳幼児・学齢児の療育支援・子育て相談を行う。2017年3月に当麻町役場を早期退職し、絵本『ぶひ』『のぶひ』『ねぶひ』(ぶひ、ずわーるど)を出版。本作で第7回絵本出版賞優秀賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちえ
36
栗山町に昔あったハルニレの巨木。北海道に人が入り開拓される中での人の悲しみ、苦しみ、うらみなどを取り込み、何十年もかけて浄化してきたという「泣く木」。和人とアイヌの男女、開拓作業で亡くなった囚人たちや女性、どれほどの人の想いがその歴史の中にあったのか。そして原生林にある木々が情念を浄化してきた…という考えには自然とうなずける。そのハルニレの木は昭和29年の洞爺丸台風の時に折れてしまったけれど、今は「泣く木」の2世を栗山の人たちが大切に守っているという。2023/06/11
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
14
永井利幸さんは『いのちのやくそく』 https://bookmeter.com/books/18368651 で三浦浩さんと共著された方。こちらの絵本は作・絵とも永井さん、モノクロの絵が、過去の悲しさと共に未来への輝きも感じます。北海道栗山町にあった(現在は泣く木二世)泣く木にまつわる言い伝え。アイヌが守ってきた土地は開墾で開けていき、現在の生活がおくれていますが、そこには並々ならぬ苦労と悲しさがあった。2023/06/01
nekonekoaki
3
長く生きた樹木は、その地に生きる生物や人間に多くの恩恵を与えてくれる。木の実や樹液、酸素や薪などに留まらず、生き物が出す不浄のもの、息や糞尿だけでなく、悲しさ、切なさ、悔しさ、恨みなどの情念をも。それらを、目に触れることのない幹のなかの洞(うろ)の中に封印して浄化させながら木は木魂から木霊へと成長するそうだ。100年を超す年月をかけて木は木霊となる。だから無闇に伐ってはいけないのに、人間は己の都合だけで木霊を伐り倒してきた。人々の負の情念はどこへ行ったらよいのだろうか。2023年4月15日初版第一刷発行。2024/05/14