内容説明
店や勤め先を持たず、客先に出向き、求めに応じて食事を提供する流しの料理人・剣。その正体は、古い包丁があやかしとなった付喪神だった。ある日、剣は道端に倒れていた人間の少女を見つける。その子は痩せこけていて、名前や親について尋ねても、「知らない」と繰り返すのみ。何やら悲しい過去を持つ少女を放っておけず、剣は自分で育てることを決意する―あやかし父さんの美味しくて温かい料理が、少女の傷ついた心を解いていく。ちょっぴり不思議な父娘の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ツン
73
悠ちゃんが可愛くて、可哀想で。。どんどん幸せになっていってほしいです。でも、学校とか行く場合はどうなるのか、ものすごく気になる。2024/07/24
真理そら
49
江戸時代から続く料理人一族に愛用されてきた包丁の付喪神・剣は出張料理人だ。ある日剣は道端で倒れている痩せた垢まみれの子供を拾ってしまう。餓死寸前の子供に食べさせる料理なのでグルメ度は低い。拾った子供が人間らしさを取り戻していく過程が描かれた物語。2023/03/18
陽ちゃん
9
まさに題名のとおり。3代続いた料理人の包丁の付喪神である剣が、自宅の前で行き倒れていた子ども悠を助けて一緒に暮らすことになりますが、これまで彼女が置かれていたと思われる状況がとんでもなく劣悪。剣や元天狗の伊三次(「鬼平犯科帳」の密偵伊三次の名前が由来らしい)、彼が遣う管狐の銀と銅たちにいっぱい構われて過ごすうちに子どもらしさが出てきてほっとしました。もっともっと構われて幸せになって欲しいな。2023/05/12
葛城騰成
7
剣と主が初めて言葉をかわした時の物語が、とてもじーんとくるものに仕上がっていました。雪の日は娘がお嫁に出たり、夫が亡くなったりする日だと悲しみに暮れていた主が、長年愛用していた包丁が付喪神となって現れた剣と団欒することで、雪の日を出会いの日に変えることができた流れが素敵でした。2025/08/18
葛城騰成
7
料理人たちが代々使う包丁に宿った魂が具現化し、人間として現世に現れた付喪神「剣」。彼は人々に料理を振る舞うことで、多くの人々を幸せにしてきた。 その過程で、食べることの楽しさや幸せ、愛を育んでいく様がしっかりと描かれていました。読んでいてとても心が温かくなりました。 学校や仕事などで体や心を疲弊している現代人にとって、実家に帰ってきたような安心感を与えてくれる今作品は、とても素晴らしいと思います。2023/05/29
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