内容説明
真の創造性と独創性を実現することは困難ではあるが、しかし潜在的には誰にでも可能である。ただし、そのためには通常の精神を激しく揺さぶり、真の創造性と独創性を可能にする状態に入るようにさせねばならない。精神のこの創造的な状態を覚醒させることによって、私たちは自分自身の内側にだけでなく、外側のあらゆるものの奥にも創造的な調和を発見することができるようになる。ボームは創造性という現象に深くかつ透徹した洞察の光を投じている。『対話について』と双璧を成す、珠玉の論考集。稀有の科学者が指し示す、創造的な生き方への道程。
目次
第1章 創造性について
第2章 科学と芸術の関係について
第3章 想像の範囲
第4章 運動を知覚する芸術
第5章 芸術、対話、暗在秩序
著者等紹介
ボーム,デヴィッド[ボーム,デヴィッド] [Bohm,David]
1917年、ブラジルに生まれる。渡米し、ペンシルバニア州立大学、カリフォルニア工科大学、カリフォルニア大学で学ぶ。1943年に博士号を取得、1961年以来、ロンドン大学の理論物理学科の主任を務める。ニューサイエンスの理論的バックボーンとして多くの共鳴者を得、特に量子力学から探究された全体性の動的描像は、注目を集めた。1992年に逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たかしゃや
13
この書は、既存のアプローチとは全く違う方法で、この世界を変えていくことが出来るのだという希望を、はっきりと我々に提示している。暗在秩序という視点はボームが自ら見出した画期的な考え方だ。ここには、人生とは、世界とは、宇宙とは、芸術であるというある種のパッションがある。私は、読み進めてゆくうちに、どんどんワクワクした。全てのクリエイターにとっての必読の書である。2014/06/20
roughfractus02
5
本書での創造性とは、思考と言語が作った個人と環境や宇宙との分断状態からのシフトを指す。このテーマを言語で語る際、著者は言語を思考の道具でなく場を作るダイアローグとコミュニケーションの要素と捉える。それゆえ言語批判を言語で行うというジレンマも生じない。物理学ではデモクリトスの原子論から量子力学が生まれたが、分割不能な原子という基本概念は衝突で生じる観測結果としての粒子へとシフトした。量子論を非局所的と捉える著者はこのシフトを創造性のモデルとする。本書では、知覚を局所的個人から非局所的全体に向ける必要を説く。2022/02/25