内容説明
裁判員制度導入のひとつに「裁判は世論と同じがよい」との考え方がある。しかし、ある最高裁長官いわく、「世論は雑音だ。裁判官たるもの、そんなものに惑わされて判決してはいけない」と…。「裁判と世論の関係」は非常に重要だが、これまで検討されず永年に渡り大きな謎であった。本書は、二〇年に及ぶ裁判官としての実績と経験を基に、著名な裁判の具体的な実例を挙げ書き下ろされた待望の書。
目次
第1章 非常識な裁判は悪いか?
第2章 裁判のシステムから考える
第3章 裁判における世論の役割
第4章 著名な実例に学ぶ
第5章 無関心が生む司法の腐敗
第6章 世論の力
著者等紹介
井上薫[イノウエカオル]
1954年東京都に生まれる。1978年東京大学理学部化学科卒業、1980年東京大学理学系研究科化学専門課程修士課程修了。1986年判事補任官となり、1996年判事任官。2006年判事退官。2007年、弁護士登録(東京弁護士会所属)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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depo
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図書館リサイクル本。判決文は本文と理由からなるが、最高裁の判決には理由が書かれていないことが多い。法律は本文と理由を書くことを命じているのに、これは違法ではないか。また判決文に本文と理由以外に本文とは無関係な裁判官の意見が書かれていることがあり、これを傍論というが、世間ではこの傍論も判決と誤解している。著者はこの傍論を蛇足判決とよび批判する。2021/06/30
抹茶ケーキ
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裁判官経験者のエッセイ。裁判官は民主的に選ばれた政府によって信任されるので間接的に民主的であること、裁判の感情化、裁判に世論を取り込むには①立法、②裁判官の自由裁量を認めることという二つの方法があること、とか。2017/11/02