出版社内容情報
《内容》 生体内には核酸とタンパク質のほかに,糖,有機酸,アミノ酸など多くの低分子が存在し,その種類は数千種に及ぶ.これらの物質には外部から取り込まれたものもあるが,ほとんどは酵素などの代謝活動によってつくり出された代謝物質である.
細胞の働きを包括的に理解しようとするとき,DNA塩基配列の網羅的解析(ゲノム解析)やタンパク質の網羅的解析(プロテオーム解析)に加えて,代謝物質の網羅的解析(メタボローム解析)はきわめて重要である.どういう条件のときにどんな物質がどのくらい生体内(あるいは,細胞内)に存在するのか.このメタボローム情報なしに代謝の動的な振る舞いを理解することはできない.
ポストゲノム時代において,メタボローム解析はさまざまなバイオサイエンス分野に応用できると考えられるが,つい最近まではこのようにすべての代謝物質を網羅的に解析するという発想はなく,メタボロームという言葉さえなかった.これにはいくつかの理由がある.まず,多数の代謝物質を短時間で計測することはきわめて高度な方法論を必要とし,いままでは技術的に難しかった.また,すべての代謝物質を短時間で計測できる技術があったとしても,そこから得られる大量のデータをどうやって理解するのかという問題があった.
しかし近年,バイオテクノロジーとITが融合することによって,大量のデータを網羅的に収集しコンピューターを用いて整理統合理解する,という新しいバイオサイエンスが登場した.このポストゲノムの新時代において,メタボローム研究は,今後,きわめて重要な役割を担っていくであろう.
今後大きく注目されるであろうメタボローム研究をいち早く紹介する待望のレビュー集.ライフサイエンスの研究者はみな必読.
《目次》
I.序論 -メタボローム概説-
II.メタボロームの最新技術
1.CE-MSによるメタボローム測定法
2.ESI-MSによるメタボローム測定法
3.HPLCおよびLC-MSによる選択的メタボローム測定法
4.GC-MSによるメタボローム測定法
5.FT-ICR-MSおよびESI-Q-TOFMSによるメタボロームプロファイリング法
6.キャピラリー電気泳動によるメタボローム測定法
7.メタボローム測定のためのミクロHPLC法
III.バイオサイエンスへの応用
1.枯草菌のメタボローム解析とトランスクリプトーム解析
2.イネのメタボローム解析
3.シロイヌナズナのメタボローム解析
4.リン脂質のメタボローム解析
5.メタボローム解析による先天性代謝異常診断
IV.メタボロームインフォマティクス
1.KEGGデータベース
2.ARMデータベース
3.GEMシステム
4.E-CELLシステムと動的/静的ハイブリッドシミュレーションアルゴリズム
V.終論 -メタボローム解析と医療-
内容説明
生命の理解には、ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームの解析に加え、細胞内の低分子代謝物質を網羅的に解析するメタボローム解析が非常に重要となる。基礎から測定技術、バイオサイエンスへの応用、インフォマティクスまで、メタボローム研究をいち早く紹介する待望のレビュー集。
目次
1 序論―メタボローム概説
2 メタボロームの最新技術(CE‐MSによるメタボローム測定法;ESI‐MSによるメタボローム測定法;HPLCおよびLC‐MSによる選択的メタボローム測定法 ほか)
3 バイオサイエンスへの応用(枯草菌のメタボローム解析とトランスクリプトーム解析;イネのメタボローム解析;シロイヌナズナのメタボローム解析 ほか)
4 メタボロームインフォマティクス(KEGGデータベース;ARMデータベース;GEMシステム ほか)
5 終論―メタボローム解析と医療
著者等紹介
冨田勝[トミタマサル]
慶応義塾大学先端生命科学研究所
西岡孝明[ニシオカタカアキ]
京都大学大学院農学研究科
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