出版社内容情報
いまだに「普通ではない」という目を向けられがちな同性愛だが、実は、地球上の生物の間では、同性愛はまったく珍しくない。
実に1,500種を超える動物で、同性間の性行動が観察されているからだ。
しかし、なぜ、子どもを残さないはずの同性間性行動がこれほど盛んなのだろうか?
どうして、ヒトの社会では同性愛が抑圧されてきたのだろうか?
ジェンダーかセックスかという既存の枠組みを超え、性の多様性の本当の意味を明らかにする。
内容説明
同性愛が観察された種は1,500以上!
目次
1 同性愛でいっぱいの地球
2 ヒトの同性愛を生物学から探る
3 生物学的説明の限界
4 ジェンダーの生物学
5 ヒューマン・ユニバーサルな同性愛
6 宗教戦争としてのホモフォビア・トランスフォビア
7 多様性は繁栄への途
著者等紹介
坂口菊恵[サカグチキクエ]
1973年、函館生まれ。函館中部高校卒業後、自宅での浪人生活を経て二十歳で家出、上京。数年のフリーター生活後、東京大学文科3類に入学し、東京大学総合文化研究科広域科学専攻で博士(学術)を取得。東京大学教養教育高度化機構での特任教員を経て、大学改革支援・学位授与機構研究開発部教授。専門は進化心理学、内分泌行動学、教育工学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
131
生物学的には、性は多様で様々な表現型があった。absintheは、かつて自然界には同性愛は存在しないのかと思っていた。そう言う単純な話でないことに気づいて何冊か読んでみた。生物学的には雄雌がそもそも入れ替わり可能な種も少なくない。自然が用意した、調べるほどに不思議な世界。雄が子育てする蛙と雌が子育てする蛙が近縁であるという例もある通り、ジェンダーの役割というのも色々と見直す余地がありそうだ。2024/04/19
miri
43
生物学的見地からの同性愛について。一般素人からすると大変に面白い内容であった。自然界の事例、幾多の説についての見解、人間社会の同性愛の歴史、研究結果に基づいての記載である。自然界では同性愛が非常にありふれており、ヒトは本質的にバイセクシャルである。性行動、性にまつわる特徴がホルモンや遺伝子で決まるほど単純ではない。生物学的にはジェンダーが基本、性行動はジェンダー表現である。ヒトという種ではゲイは極普通となると、そもそも排除や差別する理由がないだろう、違うという理由で貶める社会は好きではないと改めて感じた。2024/04/08
Roko
35
生物の世界ではオスとメスだけではないのです。成長するにしたがって性が変わるものもいれば、どちらかと判別できないものもいます。そもそも生物学的に同性愛というのは特別なことではないし、同性で子どもを育てるということもあるという事例を読んでいくと「同性婚=少子化が進む」という理屈が間違っていることがわかります。多様性には「寛容」と「受容」の両面があります。あなたが誰かを受入れるのと同じように、誰かにあなたが受入れてもらう事もあります。そう考えるのは、そんなに難しいことなのでしょうか?#NetGalleyJP 2023/07/08
なっく
33
生物は遺伝子の指令により雄と雌が交尾して子孫を増やす、そんな固定概念がページをめくるたびにガラガラと崩れていく。あらゆる生物で見られる同性愛、性行動を決めるのは遺伝子か環境か、人類の歴史における文化・宗教と同性愛の関係などなど興味深い事実が次々と明らかになって面白すぎた。性は雄と雌といったセックスではなく、連続的なジェンダーだったのね、その多様性こそが生物のリスク管理なんだな。幾多の危機を切り抜けてきた生物の営みは想像をはるかに超えている。2023/10/15
buuupuuu
25
ジェンダーを、文化環境のみによって規定される人間特有の現象としてではなく、広く生物の世界にも見られるものとして考える。生物学的ジェンダーとは、生物学的な制約を持ちつつも、環境によって柔軟に変容するようなものである。生物の行動は、オスとメスに二分されて固定されているわけではない。また、生物界に見られる性行動は生殖を目的としてなされるものばかりではない。それはコミュニケーションの役割も持っているという。生物の多様性は同性愛を正当化するわけではないが、誤った権威付けを批判するために用いることができる。2024/01/29