出版社内容情報
対人関係精神分析とは、ハリー・スタック・サリヴァン、クララ・トンプソン、エーリッヒ・フロム、そしてフロム=ライヒマンの4人によって創始された精神分析の一つである。フロイトと彼の後継者たちによる厳密に構成された精神分析のやり方をそのまま踏襲するのではなく、もっと自由に、さまざまなやり方で分析を行おうとした彼らが、自身の分析療法を検証し互いに議論を重ねながら創り上げていった方法である。
フロイトの精神分析を絶対的な信条としなかったために、彼らは「ネオ・フロイディアン」「フロイト左派」などと呼ばれ、正統派フロイディアンからは距離を置かれた。日本では、中井久夫先生の功績によって創始者の一人であるサリヴァンの評価は高く、またフロムの著書も多くの読者を得ている。しかし、サリヴァンやフロムを精神科医や社会学者としては知っていても、精神分析家として認知している人は少ないのではないだろうか。「精神分析」という土壌は同じでも、それほど彼らとフロイディアンとは、こころの捉え方や分析療法についての考え方が異なっていた。
本書は、ニューヨークに留学し、対人関係精神分析のメッカであるウィリアム・アランソン・ホワイト研究所で訓練を受けて精神分析家の資格をとった著者が、正統派フロイディアンとの違いを鮮明にしつつ、対人関係精神分析とはどういうものかを人間味あふれる筆致で綴った魅力的な心理臨床の一冊である。全編を通じて、著者の人間観や心理臨床家としての根本的な姿勢・考え方が語られ、心理臨床に対する情熱を今なお強く感じさせてくれる。留学当時のエピソードで語られる著名な臨床家たちの姿や言葉は、この年齢の著者でないと決して書けない内容であり、なかでも、元クライエントと共に自らの分析療法の振り返りを詳細に記述した第8章「私の精神分析療法」は、若い臨床家たちに資するところの非常に多い内容になっている。
内容説明
心の捉え方から、クライエントとの関わり方、臨床実践のありようなど、それぞれの特徴と違いを考えながら、自身の臨床を見つめ直す真摯な試み。
目次
第1章 精神分析事始め―ホワイト研究所での精神分析の訓練
第2章 心理療法における技術の組織化と個性
第3章 「わかる」ということ
第4章 クライエントの訴え、臨床像、症状―時代的変遷とそれに応じた心理療法の工夫
第5章 「フロイディアン」と「対人関係精神分析学派」―分析家とクライエントの関わりの観点から見た特徴
第6章 関わるところに生まれるこころ―対人関係精神分析学派の立場
第7章 「語ることを、語られるままにわかろうとすること」
第8章 私の精神分析療法―クライエントは、私との分析療法をどのように経験したのだろうか
終章 アメリカにおける精神分析の動向とわが国の精神分析の現状とこれから
著者等紹介
一丸藤太郎[イチマルトウタロウ]
1973年、広島大学大学院教育学研究科博士課程後期単位取得退学。1976年~1979年:The William Alanson White Institute of Psychoanalysisで精神分析の訓練を受け、帰国後大学院で心理臨床家の養成に携わるとともに、精神分析療法や精神分析的心理療法を実践。1993年、博士号(心理学)取得。1998年、精神分析家の資格取得(Certification in Psychoanalysis.The W.A.White Institue)。現在、ももやま心理相談室主宰。精神分析家(ホワイト精神分析研究所)、臨床心理士、日本精神分析学会認定心理療法士、日本精神分析学会認定心理療法士スーパーヴァイザー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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