出版社内容情報
現在は名誉毀損・医療・知的財産・交通・国家賠償・学校・職場・家庭などの分野ごとに縦割りになっている不法行為法上の問題点を,改めて損害賠償請求という横串を通して整理し再検討することで,損害賠償請求訴訟の現在の到達点を立体的に俯瞰できるようになり,今後の実務に役立つのではないかとの考えのもとで検討した。
各分野で定評のある現職の裁判官や元裁判官を中心に執筆をお願いし,その実務経験に基づく叡智をお借りした。裁判官にはあまり馴染みがない分野についてはその分野を専門に研究している先生方にも執筆をお願いし,総勢95人の裁判官,元裁判官,研究者に論考を寄せていただいた。
全4巻の本書は,実務で問題となる損害賠償請求訴訟におけるこれまでの到達点が簡潔にわかりやすく説明されているだけではなく,これまで通説・判例とされている議論に対し果敢にチャレンジしてこれからのあるべき損害賠償請求訴訟の姿を提示しようとする論考や,これまでにはない視点からの検討を含む論考も少なくなく,まさに現時点における損害賠償請求訴訟の実務を立体的に俯瞰することができる有益な実務書となっている。
訴訟を担当する裁判官や弁護士だけではなく,損害賠償請求に関係する多くの方々に本書を手に取ってその完成度を確認してもらいたい。
【目次】
【第Ⅰ巻】―損害論・交通・学校・職場・家庭―
Ⅰ 損 害 論
1 積極損害〔鈴木拓児〕
2 消極損害〔南部潤一郎〕
3 物損―車両の価値など〔笹本昇〕
4 素因減額〔吉田彩〕
5 過失相殺〔深見敏正〕
6 損益相殺・他の救済制度との調整〔大島眞一〕
7 定期金賠償〔松本展幸〕
8 損害賠償請求権の消滅時効〔齊藤充洋=深見敏正〕
9 精神的損害―慰謝料の請求〔矢尾渉〕
Ⅱ 交 通
10 運行供用者〔森冨義明〕
11 運行供用者責任の免責〔森冨義明〕
12 運行〔本田晃〕
13 他人〔松山昇平〕
14 被害者による直接請求・保険者の代位〔和久田道雄〕
Ⅲ 学 校
15 いじめや体罰などに対する損害賠償請求〔齊藤顕〕
16 授業や課外活動中の事故などに対する損害賠償請求〔森剛〕
17 先生から暴力的生徒やモンスター・ペアレント等に対する損害賠償請求〔餘多分宏聡〕
18 先生から校長や地方自治体などに対する損害賠償請求〔上原卓也〕
19 スポーツの練習中・試合中・観戦中の事故に対する損害賠償請求〔大藪和男=浅見宣義〕
Ⅳ 職 場
20 パワハラやセクハラなどに対する損害賠償請求〔日野直子〕
21 生命・身体に対する安全配慮義務違反などに対する損害賠償請求〔田中寛明〕
22 職務行為を引き金とする精神的疾患・自殺などに対する損害賠償請求〔石垣智子〕
23 育児休業差別・非正規労働者差別などに対する損害賠償請求〔佐々木宗啓〕
Ⅴ 家 庭
24 DV(家庭内暴力)などに対する損害賠償請求〔坂田千絵〕
25 不倫・不貞などに対する損害賠償請求〔井上哲男〕
26 高齢者や判断能力が衰えた者への詐欺などに対する損害賠償請求〔小池あゆみ〕
27 高齢者介護の過誤などに対する損害賠償請求〔菊池絵理〕
28 認知症高齢者などの監督者に対する損害賠償請求〔齊木敏文〕