出版社内容情報
なぜ人は他人を思いやるのか?思いやりという人間特有の感情の謎を、心理学、工学、理学、医学の一線で活躍する専門家が解き明かす
「思いやり」とは自分の利益を犠牲にしてでも他人の利益の向上を図ろうという考え方である。この心理は人間に本来備わったものなのだろうか。それとも何か特別な状況で起こるものなのだろうか。本書では、思いやり行動が個人だけでなく企業などにも現れて社会的影響を及ぼしている例を紹介する。人間は本来利己的であると思われているが、思いやりが起こるのはなぜか、それが結果として個人の利益に繋がるのはなぜか、という興味深いテーマを扱っている。
<心理学叢書>
1927年(昭和2年)に設立された日本心理学会は全国規模の心理学会としてもっとも長い歴史をもつ。2012年時点で会員数7400名、基礎領域から応用領域まで広く心理学の研究をおこなっている。本叢書は、この日本心理学会が監修となって、現在活躍中の若手からベテランまで実力を兼ね備えた編者と執筆者が織りなす書き下ろしシリーズである。現代社会が心理学に求めるテーマに、最新の知見を分かりやすく提供する。
第1章 思いやりはビジネスにも活かされている
1 ビジネス現場に見る思いやりとは
2 思いやりがなぜビジネスを動かすのか
3 思いやりが生む利他的行動
4 働く人に対する利他的行動
5 思いやりがビジネスにもたらすもの
第2章 思いやりはどんな場面で現れやすいのか
1 援助行動はなぜ生じるのか
2 援助行動の分類
3 年齢別の援助行動
4 キャサリン・ジェノベーゼ嬢殺害事件とその後の研究
5 動物に見られる援助行動
6 善き隣人たち
7 日常生活における援助行動
8 非日常(スキー場)における援助行動
9 緊急時、災害時の援助行動
10 集団での援助行動
11 まとめ
第3章 企業の思いやりと人助けの行動
1 東日本大震災時の経済界の援助行動
2 企業のボランティア活動支援の実例
3 阪神・淡路大震災時の企業の援助行動
第4章 思いやりはどのように獲得されるか
1 思いやりとは
2 向社会的行動を理解する枠組み
3 向社会性の発達に関連する諸要因
4 向社会的行動を示す子どもの特徴と親の特徴
5 今後の課題と展望
第5章 思いやりと共感――本当の思いやりはあるのか
1 思いやり行動とは
2 思いやりの気持ち
3 実験で考える
第6章 思いやり行動を取る心の動き
1 日常の中の意思決定
2 「助けなくてはならない」という気持ち
3 「助けたい」という気持ち
4 思いやり行動に必要なもの
第7章 思いやりの進化論的基盤
――階層淘汰による利他的行動の創発
1 はじめに
2 利他主義の進化論的説明
3 階層淘汰に基づく利他主義の創発
4 〈セクショナリズム〉と利他主義
5 「外患誘致」への憤りと厳罰化の進化
第8章 進化学から見た思いやり
1 人間だけのもの?
2 自己犠牲はどうやって進化するのか
3 評判によって協力を維持する
4 うまく協力を維持できる社会規範
5 評価は社会全体で決まる必要がある
第9章 脳神経科学から見た思いやり
1 脳とパソコンはどこが違うのか
2 独裁者ゲーム――利他性を測定する
3 「思いやりの心」に関わる脳の領域――腹内側前頭前皮質
4 サイコパス――他性の欠如としての病い
5 価値観に関する価値観――サイコパスを病的とみなす理由は?
6 利己的・利他的主体は誰か
執筆者
小阪 裕司【第1章】
水田 恵三【第2章】
小榑 雅章【第3章】
二宮 克美【第4章】
菊池 章夫【第5章】
松井 豊【第6章】
藤井 聡【第7章】
羽鳥 剛史【第7章】
巌佐 庸【第8章】
村井 俊哉【第9章】
【著者紹介】
関西大学名誉教授
内容説明
思いやりがなぜビジネスを動かすのか。商品の値段が上がったのに売れ行きが好調だった薬局の不思議、震災の時、思いやりがある会社が取ったある行動、思いやりが消え去る恐怖の瞬間。日本心理学会が贈る、面白くてためになる心理学叢書第1弾!「心」の謎が解き明かされる!
目次
第1章 思いやりは経営にも活かされている
第2章 思いやりはどんな場面で現れやすいのか
第3章 企業の思いやりと人助けの行動
第4章 思いやりはどのように獲得されるか
第5章 思いやりと共感―本当の思いやりはあるのか
第6章 思いやり行動を取る心の動き
第7章 思いやりの進化論的基盤―階層淘汰による利他的行動の創発
第8章 進化学から見た思いやり
第9章 脳神経科学から見た思いやり
著者等紹介
高木修[タカギオサム]
1940年生まれ。1965年京都大学文学部哲学科心理学専攻卒業。1970年京都大学大学院文学研究科心理学専攻単位取得満期退学。現在、関西大学名誉教授
竹村和久[タケムラカズヒサ]
1960年生まれ。1983年同志社大学文学部文化学科心理学専攻卒業。1988年同志社大学大学院文学研究科心理学専攻単位取得満期退学。現在、早稲田大学文学学術院教授、早稲田大学意思決定研究所所長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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