内容説明
古代世界は呪術に覆われている。自らの皇位継承と政権安定のために呪術の限りを尽したのが持統ではなかったか。日本の古代世界に抜群の存在感をもつ女帝をめぐる興味津々の推理。
目次
第1章 生い立ち(皇祖母・皇極天皇の性格;その幼児体験と人間形成)
第2章 壬申の乱
第3章 五徳終始説と白鳳期の皇位継承(五徳終始説について;孝徳天皇「水徳」の推理;天智天皇「木徳」の推理;天武天皇「火徳」の推理;皇極・斉明天皇の諡号)
第4章 天武天皇崩御とその埋葬
第5章 持統即位への道(大津と草壁;陰陽に対置される両皇子の死;持統即位演出者―不比等と麻呂;元明天皇御製中の麻呂;太上天皇創始)
第6章 持統天皇呪術の種々相(土気の重用―柿本人麿の起用;藤原京と水気の呪術)
陰陽五行思想の概要
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
獺祭魚の食客@鯨鯢
55
わが子 草壁皇子を何としても帝位につかせたい女の執念は、幼い頃の原体験にあるようです。 母方の祖父を父親(天智)の謀略により殺された。父の妃(額田王)は夫(天武)から略奪し、父の死後は再び夫の妃に返り咲きました。 額田王こそ最大のライバルとして打ち負かしたい相手でした。天武の腹違いの皇子を次々と謀殺することが、彼らの怨霊となり藤原京、平城京に禍(わざわい)をもたらしました。 彼女は天武よりも腹違いの弟不比等の方をより愛していたように思えます。2020/10/20
翔亀
24
【持統5】陰陽五行思想に依拠した歴史解釈で、その成否は浅学故何とも言えないが、驚愕だったのは、持統は、大津を殺しただけでなく、草壁をも殺害したという。短い期間のうちに、大津に続き草壁も急死していて、書紀には単に死すとしか記述がないのに注目する。異常すぎないか。持統の権力好き・独占欲(幼くして祖父と母を殺害されている)・結婚への満たされぬ思い(額田との取引材料しとての結婚)により、皇位しかすがるものがない。草壁にさえ皇位は渡せない、と殺害したと推理するのだ。ここには、あまりに人間的な持統像がある。2014/05/30
さつき
20
少し前に梨木香歩さんの『丹生都比売』を読んで、あとがきにこの作品のことが書かれていて興味を持ちました。天武天皇の諡号が道教の思想に基づくことは知っていましたが、これほど陰陽五行説による呪術が行われていたとは知りませんでした。著者によると、即位の日どころか崩御の日もその思想により定められたそうです。そして持統天皇の意志の強さ、粘り強い信念には圧倒されます。2016/03/03
michi
4
なぜ息子を殺し、10年で孫に譲位するも権力は手放さなかったのか。五徳終始説で紐解く皇位継承の謎。生い立ち、気質、夫の額田王への愛…これだけの面白い要素があるとは。やっぱり暫く持統天皇追ってみたいです。しかし陰陽五行は難しいです。なかなか理解できない…2009/11/13
やたろう
2
やっぱり壬申の乱前後の人間関係は面白い。想像力を駆り立てられます。そのなかでも超強力な個性である持統天皇。この本の推論でまた違った人物像が見えてきます。この時代を描いた小説なり漫画、もっとないかな~。2012/05/12