内容説明
膠着した戦いは、多くの捕虜を生み出し、戦争を続けるには、彼らの労働力もカウントされねばならなかった。捕虜たちは、何を感じ、何を食べ、どう働いたのか?それぞれの体験を通してみえてくるものを考える。敵国のために働くとは。
目次
第1章 捕虜になる(ガリツィアの戦い1;捕虜になる;ロシアの捕虜政策;「普通」のチェコ系捕虜兵の記録;ロシア捕虜収容所の一日;オーストリア=ハンガリーのロシア、セルビア捕虜兵;働く捕虜兵;捕虜兵の労働契約)
第2章 マイナス二〇〇万人プラス二〇〇万人イコールゼロ?(ガリツィアの戦い2;オーストリア=ハンガリー捕虜兵の解放;対イタリア戦線;ジーグムンツヘルベルクの捕虜収容所;捕虜兵を雇用するにあたっての指針)
第3章 オーストリア=ハンガリーの捕虜兵労働部隊(捕虜兵労働部隊;労働部隊捕虜兵の逃亡;交際;食糧事情)
第4章 総力戦の狭間で(働く捕虜兵 in Japan;帰る人、帰れない人、残る人;総括)
著者等紹介
大津留厚[オオツルアツシ]
1952年生まれ。東京大学大学院社会学研究科修了。現在、神戸大学大学院人文学研究科教授。専攻は、ハプスブルク史、オーストリア近現代史、民族政策(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Toska
10
分析の中心は第一次大戦のオーストリア・ハンガリー帝国で、観測範囲はそれほど広くない。だが総力戦体制下における労働力の確保と捕虜の使役という観点から見れば、非常に奥行きのあるテーマ。捕虜労働にあたっては相手国との関係性が前提としてあり、国際条約も一定の役割を果たしていた。第二次大戦の独ソ戦と大きく異る部分で、この辺りが「絶滅戦争」のメルクマールとなるのかもしれない。2024/01/26
MUNEKAZ
5
WWⅠ下、大量に発生した敵国の捕虜を、いかに労働力として活用したか、オーストリアや日本を例に紹介している。未曾有の総力戦の中で、どの国も手探りの状況で捕虜の扱いを行っていたことがよくわかる(なにしろ捕虜たちの最初の労働が、増えすぎた自分たちが暮らす収容所作りである)。またハーグ陸戦条約の遵守によって、どこか牧歌的に思える部分もあるが、戦況の暗転に従いその扱いもしだいに悪化していくのは、のちのWWⅡにつながる部分として興味深い。2017/10/24
dongame6
4
あまり第一次大戦の知識が無い私にとって「第一次世界大戦での捕虜たちの労働について」というテーマそれ自体が斬新に思えたし、太平洋戦争で問題化した日本軍の捕虜の取り扱い、映画等で話題になった「日本のドイツ捕虜達」に対する新しい見地が得られる良い機会となる本だった。思わぬ総力戦で不足した労働力を百万人単位で得た捕虜から抽出しようという必要に迫られた各国の試みとその障害について、また捕虜の取り決めを定めた条約等の基礎知識について、そして何より当の敵国での労働を迫られた捕虜一人一人の経験についての記述が面白かった2013/06/11
P-man
1
人類史上初の国家による『総力戦』が行われた第一次世界大戦において、労働力としての捕虜を活用が手探りで行われていたのがよくわかる。収容所の環境が劣悪すぎて管理者までもが悲鳴をあげているのが生々しい。あとシベリアはやっぱりおかしい。2019/07/18
俊太郎
1
WW1時の捕虜の労働と待遇について。詳細な資料が使われていて面白い。ヨーロッパの捕虜について日本語でもっと掘り下げてある本があれば読んでみたいところ。2018/01/19