出版社内容情報
なぜ、権力は飢えさせるのか? 飢餓という暴力の歴史をたどる
史上最大の殺人計画「飢餓計画(フンガープラン)」。ナチスがソ連の住民3000万人の餓死を目標としたこの計画は、どこから来てどこへ向かったのか。その世界史的探究の果てに、著者は、「飢餓計画」と現代世界の飢餓を結ぶ重要人物を探り当てる。飢餓を終えられない現代社会の根源を探る画期的歴史論考。第一次大戦から第二次大戦を経て、イスラエルのガザの虐殺までの現代史を、食を通じた権力の歴史、そして「施設化」した飢餓の歴史として描く!
飢餓は発見後に実在化したのではない。飢餓それ自体が、依然として、問題化と非問題化のあらそいの場なのだ。ナチスの飢餓もイスラエルの飢餓もソ連の飢餓もそれは変わらない。では、この飢餓を再び自然化する力の源とはなにか─ 本書は、このような問いから始まる。(…)飢餓は人を平等に殺さない。ここに介入するのは自然というよりは、社会であり制度であり政治である。「序章」より
○目次
序章 歴史概念としての食権力
第1章 第一次世界大戦と食権力---ナチス飢餓政策の精神的基層
第2章 ナチスの飢餓政策----史上最大の殺人計画
第3章 ナチスの飢餓から世界の飢餓へ---ジ・カストロの「政治生態学」
第4章 イスラエルの食権力---洗練される生態学的統治
終章 ナチスとイスラエルと現在の飢餓をつなぐもの
【目次】
序章 歴史概念としての食権力
1 標的にされるパン屋
2 飢餓を必要とする世界
3 食権力という概念
4 食権力論の先駆
5 歴史のなかの食権力
第1章 第一次世界大戦と食権力---ナチス飢餓政策の精神的基層
1 土地なき民に、民なき土地を
ナチスの植民地主義/第二歴史家論争/FAOの基盤としてのナチズム批判
2 第一次世界大戦期の食権力---飢餓の被害者として
全独逸飢餓に迫る/ドイツの飢えの背景/代用食品と豚殺し
3 農村婦人の第一次世界大戦
農村婦人とはだれか/「食べられるもの」の発掘/捕虜と闇市-バイエルンの農村女性たち
4 ナチスの飢餓シンドローム
ダレの第一次世界大戦観/バッケの第一次世界大戦観/黒海と大西洋をまたぐユダヤ系穀商人/「穀物メジャー」の源泉
5 食権力の水源としての黒海地域
第2章 ナチスの飢餓政策----史上最大の殺人計画
1 「世界史上最大の殺人計画」の準備
石油と食糧/常軌を逸した行政文書/ロシア人の胃袋は伸縮自在
2 飢餓政策の結果
ソ連市民の飢餓/ソ連捕虜の飢餓/労働不足と飢餓計画という矛盾/闇市と虐殺のあいだ/トレブリンカの犬
3 「東方」とナチズム
「民族ドイツ人」たちの入植/入植者のみた暴力/「ブラッドランド」の飢餓
4 ナチス飢餓政策の史的文脈
女たちの第二次世界大戦/欧米食支配への「抵抗」
第3章 ナチスの飢餓から世界の飢餓へ---ジ・カストロの「政治生態学」
1 外国から見たナチスの飢餓計画
マリア.バビツカ/ゾラフ・ヴァルハフティグ/飢餓計画と対決したブラジル人-ジョズエ・ジ・カストロ
2 ブラジルからの問い---ジ・カストロのたたかい
なぜ、人は飢餓を論じたがらないのか/ブラジル北東部に飢餓をもたらしたもの/土を食べる/飢餓に抗する有機農業
3 世界食糧委員会-ジョン・ボイド・オアの夢
オアの挑戦/政治生態学へ/ヒトラーとジ・カストロ/飢えは人生のダイナマイトである
第4章 イスラエルの食権力---洗練される生態学的統治
1 農薬攻撃の現代史
2 失われゆくガザの食
封鎖という食権力/食権力の発露としての入植
3 パレスチナの生態学的統治
農業と漁業に対する攻