内容説明
いつの間にか、とんでもないことになっていた!急速に厳罰化する日本の著作権法、その変容の経緯と関わる人びとの思惑を丁寧に追い、現状に介入する痛快作。
目次
第1章 パクリはミカエルの天秤を傾けるか?
第2章 それは権利の侵害です!?
第3章 法律を変えるひとびと
第4章 ダウンロード違法化はどのようにして決まったのか
第5章 海外の海賊版ソフトを考える
第6章 著作権秩序はどう構築されるべきか
著者等紹介
山田奨治[ヤマダショウジ]
1963年生。現在、国際日本文化研究センター教授、総合研究大学院大学教授。京都大学博士(工学)。専門は情報学、文化交流史。筑波大学大学院修士課程医科学研究科修了後、(株)日本アイ・ビー・エム、筑波技術短期大学助手などを経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
garth
8
「映画盗撮防止法」「法が禁止する「盗撮」は最初の有料上映開始日から八ヶ月間だけである」知らなかった!2012/04/04
おおにし
7
文化の発展に寄与することを目的として制定されているはずの著作権法を改正するその現場では、受益団体どうしの利権争いと、一般市民から補償金などでいかに金をふんだくるかの悪知恵の出し合いしか行なわれていないとは何とも嘆かわしい。日本の音楽業界はCDが売れないのは違法ダウンロードのせいだと決めつける前に、自分たちが提供するコンテンツに売れない原因があるのではないかと真摯に反省するべきではないだろうか。著作権法をいくら厳しくしてもそれだけでは音楽業界の衰退は止められないと思いますよ。2012/07/19
Wataru Hoshii
3
番組制作の仕事をしているので、日々著作権の両面に向き合っている。すなわち、番組の著作権(出演者や音楽その他の権利を含む)を保護するという仕事と、番組制作のために様々な著作物の使用許可を取るという仕事。だからどちらの立場もよく理解できるのだが、厳し過ぎる著作権法は、ユーザーの利便性を阻害することで、結局は文化産業みずからの首を絞めることになるというのが僕の見解。本書の白眉はやっぱり議事録の部分。ユーザーは現状に文句を言うことで終わらず、こうした法改正の議論に注目し、発言していくべきだという主張に共感する。2012/01/22
escher
3
自分たちが身近に接しているものの、なくても食うには困らないコンテンツ(やはりこの言葉に慣れないが、映画・小説・演劇・音楽などをひとまとめにして言うには便利だ)に関する法律、著作権を「誰が」「どういう過程を経て」改正されるのかを、丹念に書いた本。私的録音録画小委員会で繰り広げられた、消費者・家電メーカー・コンテンツホルダーなど利害が対立する「識者」の激論がかなり面白い。余談だが、映画の「全世界同時公開」の場合、時差の関係上、日本が最初に公開されることになるらしい。2011/10/03
koji
2
この本は、著作権法の入門書として価値のある良書と思います。具体的で分かり易い事例【「着うたキングダム事件」「ひこにゃん騒動」「キャンディ♥キャンディ事件」「ダウンロード違法化をめぐる審議会過程(議事録読み取り)」等】を提示して読者の興味をひきつけるだけでなく、その根底にある著作権の精神(文化の発展への寄与という法の趣旨、権利の保護と公正な利用の対立、著作者と著作権の厳格な分類、著作権の厳罰化、文化の伝播)を鋭く訴えていきます。おそらく著者の根本精神は「市民の生活をより良くすること」の視点でしょう。感服2012/06/16