内容説明
昭和一六年一二月七日深夜、コタバル沖。「さすがにこの距離からはわからんな」装甲艦鞍馬の藤原艦長はその時、夜間戦闘艦橋の配置に就いていた。夜間戦闘艦橋にはいわゆるテレビジョンが置かれていた。後の世のテレビと比較すると解像度はかなり低い。それでも海と陸地、さらに僚艦の姿ははっきりと識別できた。もっともこれを可能とするために直径一・五メートルの集光装置がマストの上についている。艦橋構造物は直径二メートル近いシリンダーが貫いていた。この艦橋構造物を貫くシリンダーの下―つまり船体の中―に巨大な反射鏡が置かれていて、焦点の位置に艦橋構造物の夜間戦闘艦橋があった。この二隻の就役が遅れた理由も、工事途中からこの特殊射撃盤を装備することが決まったためだった。客船時代まで遡れば、日本海軍でもっとも建造工事期間が長いのが、この二隻の軍艦だった。
著者等紹介
林譲治[ハヤシジョウジ]
1962年、北海道夕張郡長沼町生まれ。ナイキミサイル基地訴訟で揺れ、千歳基地が隣接するという環境で育ったため、幼少時より軍事や防衛問題に興味を抱く。現在、ホームページ「艦船計画」を開設中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ねんこさん
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果たして太平洋戦域でポケット戦艦なる中途半端な存在がどの位役に立つのかという疑問はあるが、作者も解った上でわざと書いている節もある。無茶と理解した上でどこまで違和感のない物語へと軟着陸させるか、その辺りが本作品の見所か。2010/08/21
いちよんに
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水陸両用戦車を装備した陸戦隊付きで赤外線探査装置のっけた装甲艦、ってかなりなイロモノ兵器がしれっと活躍しているお話。通商破壊や基地襲撃やられたらかなり迷惑だけどよく考えたら空母があればいいよね、ってなるだろうし、次巻以降、どんな場面でこの艦が活躍していくか。2018/02/11
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