内容説明
五隻のイ号が、二万メートルの射程距離ぎりぎりから発射した、合計三〇本の魚雷は、はたしておどろくべき効果を発揮した。これは最初から駆逐艦のような小型艦艇のエンジン音やスクリュー音は無視するよう設計されていた。重巡(甲巡)以上がターゲットである。そのため日本魚雷は、駆逐艦をすりぬけ、輪形陣内部に突進。まず戦艦イリノイ、ケンタッキーが三本ずつ片舷に食らい、さすがにバルジを持つ戦艦といえども強力な弾頭を持つ九三式魚雷を三本も食らってはたまらない。その瞬間大破した。艦は大きく傾き、戦艦部隊司令官シャーマン少将は注水による復元を命じたが、破孔が大きすぎて注水が間に合わない。傾斜したままでは主砲の斉射はできない。そのため二隻とも戦艦としての機能は喪失した。ハルゼーがその報告を聞いて驚愕するまでまもなく、こんどは空母群を衝撃が襲った。
著者等紹介
田中光二[タナカコウジ]
昭和16年2月14日、京城生まれ。早稲田大学第二文学部卒。『黄金の罠』で第1回吉川英治文学新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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