内容説明
「敵機、双発の大型爆撃機らしきもの二機、東京に接近中」くだんの防空司令所に連絡した。このときはじめて司令所は大騒ぎとなった。東京南部に防空警報が鳴り渡り、厚木の陸軍航空隊基地から屠龍と鐘旭が発進した。チベッツは前方にきらきら光る複数の翼を発見して舌打ちした。「しまった、みつかったぞ!ジャップもまるきり馬鹿じゃないな」「どうします、自爆の準備をしますか?」副操縦士が尋ねる。その顔は蒼白だった。それも当然、自殺の準備をしようというのである。「まだ早い、東京湾上空でも投下していいという命令が出ている。ともかく行けるところまで行くぞ!」チベッツは叫んだ。「上昇しろ!」エノラ・ゲイはエンジンをうならせて上昇した。
著者等紹介
田中光二[タナカコウジ]
昭和16年2月14日、京城生まれ。早稲田大学第二文学部卒。『黄金の罠』で第1回吉川英治文学新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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