出版社内容情報
「忘れようとしていた痛みが「ここ!」と叫んでいる」
――――作家・町田そのこ(「解説」より)
大ヒット作家・木爾チレンの「伝説の衝撃作」、ついに文庫化!
希望と絶望、羨望と嫉妬……
愛憎渦巻く、狂気の物語。
若くして小説家デビューを果たし、その美貌と才能で一躍人気作家となった東山冴理。
しかし冴理は人気絶頂のさなか、突然、筆を断った。
一体なぜ――。
やがて30年の時が経ち、冴理のもとへ、ひとりの女性編集者が執筆依頼に訪れる。
すると冴理は語り始める。
心の闇に葬った、戦慄のその過去を……。
これは才能を信じて生きた女性作家ふたりの光と影、あるいは愛憎の極致。
魂が震える傑作!
著者渾身の「文庫版あとがき」、作家・町田そのこ氏による「解説」も特別収録!
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
30
若くして小説家として脚光を浴びながら突然筆を折った東山冴理。彼女のもとを訪れ過去を紐解いていく編集者との再会が描かれる作家小説。自分には執筆する権利がないと断る冴理に、亡くなった白川天音との関係を問う編集者。冴理が語る全ての運命の歯車を狂わせた天音との邂逅。才能の差を突きつけられ、羨望と嫉妬、愛と憎しみが複雑に絡み合う関係で、彼女のために打った手がかえって相手を追い詰めてしまう悪循環には切なくなりましたけど、なかなか思いが伝わらない、不器用なすれ違いの末に辿り着いた結末には確かな救いがあったと思いました。2025/10/04
なみ
13
東山冴理と白川天音──2人の女性作家の、影と光の物語。 心が握りつぶされるような展開が続いて、しんどかったですが、その分、物語に引き込まれました。 最終楽章は絶望でもあり、同時に救いにも感じられました。 何かが違っていたら、何かが少しでもズレていたら、もっと素敵な関係性でいられたかもしれないのに。 そんな幸せな世界線に思いを馳せながら本を閉じました。 とても面白かったです。2025/11/02
LUNE MER
12
文章自体がまず好きで、さらに作中で描かれる小説家の苦しみと「狂信」の迫力が凄い。ひと昔前の映画ではあるけど、モーツァルトの生涯を描いた映画「アマデウス」を観てから本作を読むと、天音のキャラや終盤の執筆シーンはオマージュであることが分かり、彼女の立ち振る舞いを劇中のモーツァルトと重ねるとかなりイメージが豊かに具現化される。「神に愛されていた」というタイトル自体、「アマデウス」(ラテン語で神に愛される者の意)のオマージュであると同時にラストでのタイトル回収の見事さ。美しい作品だった。2025/11/29
椎名
8
短編は触れたことがあったが、長編は初読みの作家さん。あとがきで自身でも触れている通り悪い意味ではなく若者向けで読みやすさに全振りしている感覚がある。文体にも癖がなく、だからこそ、自身もまた作家だからこそであろう綴られる生の苦しみがわかりやすく読者に届いているのだと思う。光と闇の作品どちらに救われるタイプか二分されるとあったように、創作に必要なエネルギーもまた殺意と祈りで二分される気がしている。それもまた紙一重ではあるだろうが。展開自体は読めてしまったが、それでも天音が冴理に向ける信仰に近い愛は良かった。2025/11/26
ICHI (atomic)
7
才能を信じて生きた女性作家ふたりの光と影、あるいは愛憎の極致——希望と絶望、羨望と嫉妬…愛憎渦巻く、狂気の物語。 素晴らしい読書時間で、あっという間👏✨結末は視えてるんだけど、感情が動いた!もう超えてきた!沢山の人に読んで欲しい作品🙂↕️2025/10/28




