内容説明
起業するも手形詐欺に遭い借金まみれになった青年・カズヒロ。代議士の裏切りで罪を着せられた中年秘書・コタニ。御曹司を射止めるも調停離婚させられた元OL・タツコ。人生に行き詰まり富士の樹海に迷い込んだ彼等は、幻の洞窟―“穴”で生活する老人・ロクさんに出会い、自給自足の共同生活を始める。洞窟の奥底で稀少金属が見つかったとき、彼らは日本転覆を企てる!?
著者等紹介
原宏一[ハラコウイチ]
1954年長野県生まれ、茨城県育ち。早稲田大学卒業後、コピーライターを経て97年『かつどん協議会』でデビュー。文庫版『床下仙人』が書店員の熱烈な支持により2007年ベストセラーに。同書は07年啓文堂書店おすすめ文庫大賞にも選ばれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
67
★★★★☆ 登録忘れ。お気に入りさんのレビューでいつものように読んでたことを思い出しました。穴!これでひとつの世界。これは引き込まれました。星5でもよかったくらいなんですが、少しだけ陰気臭ぁってとこが個人的には避けてほしかったなー。
らぱん
47
「穴」その③ 青木ヶ原樹海で死に損なった自殺志願者が寄り集まって洞窟に住み狩猟採取的コミュニティを作る。面白い。語り手を変えて、今までの人生、心情の変化や現在の思惑を独白していく。古株最年長の男は物知りで地質学から富士講までなかなか語る。かつて富士山麓にあった某教団を意識した物語だと思うが、パロディとも社会風刺ともいえない中途半端な方向に話は進む。著者は大きく広げた風呂敷の結び方がわからなくなったのではないか。「穴」に盲点、落ち度などの意味もあるかもしれないが言いたいことが伝わらない。ちょっと残念。55点2019/02/24
sin
44
出世作『床下仙人』の数年前に上梓された長編作品。作風である奇想天外な発想は十分在るものの、社会に対する警鐘という意味合いが強く感じられ、読後の爽快感には欠ける。読み始めてすぐこの物語はどこに向うのだろうという興味からつい最後まで読み切ってしまった。シリアスなドタバタとの捉え方が出来るのではないだろうか?そうそうこないだTVで見たけどあの樹海の中に街があるんだね!2014/06/11
りょうこ
38
やはり原さんは話の着想が面白い。面白いだけに最後の方がバタバタなのが残念。もう少し膨らませても良い場面があった様に私は思うが..。でも最後の終わり方は好きだな!2014/07/15
thee birdmen
27
富士の樹海に死にに行った4人の男女が洞穴で暮らすうちに国を作って国家転覆を図る壮大な物語。溶岩洞窟の奥底に眠る希少鉱物が転機になるのですが、富士山にまつわるウンチクが面白いです。ざっくり言えば縄文的生活を志向するカルト宗教の顛末。でもその内幕には様々な人間の複雑な思惑か絡まっているという意味では気安く笑飛ばせないところも見え隠れします。『成功者は成功体験をなぞって失敗する。失敗者は失敗体験をなぞって失敗する』という言葉が印象に残りました。じゃあ、どないせぇっちゅうねん。と。2016/02/21