内容説明
広島の田舎町に暮らす作家・世良の家から、妻の加奈子が姿を消した。友人の内畠は実情を探ろうとするが、世良は話を逸らし、執筆中の原稿を読んでほしいと言う。それは、「座敷わらし」「言うな地蔵」「吉作落とし」など日本各地に伝わる怪談をモチーフにした物語だった…。昔話と現実世界が交錯する幻想的なミステリー。著者初の短編集が、いきなり文庫で登場!
著者等紹介
大門剛明[ダイモンタケアキ]
1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒業。2009年『雪冤』で第29回横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞をW受賞。以後、精力的に新作を発表し、社会派ミステリーの新星として注目を浴びる。12年、「言うな地蔵」が第65回日本推理作家協会賞・短編部門の候補に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんたろー
185
お気に入りの大門さんが「怪談風ミステリ」を出していたと知り興味津々…救命救急士・内畠が友人の作家・世良を訪ねる序章から始まり、世良が書いた怪談をモチーフにした短編を5つ読み、内畠が表題作の最終章で不可解な謎に向き合う「入れ子構造」…5つの短編は奇妙な現象とミステリのバランスが丁度良い塩梅で、オチに人情が香るのも好みで嬉しかった。全体を括る最終章が「意外性の為に無理筋を通したなぁ」と感じた…真犯人の罪が、それまでの性格と乖離して、急にイヤミスへ舵を切っているのが残念!著者のサービス精神が私には裏目だった。2020/11/19
モルク
102
大門さんがホラー?ホラーというより怪談をモチーフとしたミステリー。偏屈で人付き合いをしない作家の世良の唯一の友内畠の所に世良の妻の妹が姉と連絡がつかないと訪ねて来る。事情を聴きに世良のもとを訪れた内畠は、世良から怪談をモチーフとした物語の原稿を渡されるという序章から始まり、それから5つの短編…これがあたたかみもあり最後にオチもある。最終章は意表を突くどんでん返しが。今までの大門作品とは違う一面が見えて面白かった。 2021/05/22
★Masako★
85
★★★✰︎ 大門さんの初短編集。でもタイトルも装丁もホラーっぽい!?とても気になったので読んでみた。作家の世良の妻が行方不明と聞き、友人の内畠が世良の家を訪ねるが、話を逸らされ代わりに執筆中の原稿を読まされるという、入れ子構造の小説。物語は座敷わらし、言うな地蔵、河童の雨乞い等、怪談や伝承をモチーフにしたミステリーで、怖くはないがどれもがラストに一捻りあり、ドキドキしながら楽しめた。ラストの表題作で世良の妻の行方不明の謎が解けるが…えーっ、そういう事だったのか!大門さんのこんな作品も良いな♪【図書館本】2020/10/31
アッシュ姉
84
怖さよりもミステリー要素が際立つ短編集。大門さんらしい驚きの展開もあり楽しめたが、最終話だけテイストが違うのは、本当に怖いのは言い伝えの怪談ではなく現実の人間ということだろうか。作風の広がりも新鮮でいいけど、やっぱり社会派ミステリーの大門さんが恋しくなる。2021/05/06
タイ子
66
大門作品にしては珍しい何だか怖~いタイトル。日本各地に昔から伝えられる怪談話をモチーフにミステリ仕立てにした短編集6話。「座敷わらし」であっ!と驚き、「河童の雨乞い」で罪と罰と償いで大門さんの真骨頂を感じる。中でも「吉作落とし」は高所恐怖症の人なら冷や汗かも。タイトルはまんま引きずる音です・・・キャー!たまにはこういうのもいいですね。2019/04/28