感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
63
尻尾が二つに分かれた精子から生まれた無性人間。男でも女でもなく、人間の奴隷として、戦争や戦争ショーに駆り出されていく。そして起きるクーデター。なんとも残酷で悲惨な物語なのだが、大人の風刺漫画やナンセンス漫画に見られるようなタッチで軽快に進行する。ジェンダーやセックスへの視点が手塚治虫らしい。単行本と雑誌掲載時ではラストが大きく違い、その両方を掲載しているのが面白い。その他手塚漫画の改変の数々も巻末に挙げられているのも資料として貴重。数々の論評も楽しく読めた。2025/04/27
kokada_jnet
27
「週刊漫画サンデー」に1967年-68年に連載された、手塚治虫初の、オトナ漫画の長編作品。女性キャラクターが露骨に小島功の真似でオカシイね。内容的には「山椒魚戦争」からの影響を、大きく感じる。峯島正行『回想 私の手塚治虫』では、この漫画が精子を題材にしているのは、手塚が医学博士号をとった研究が「タニシの精子の研究」だったせいじゃないか、としている。2017/07/16
あぶらや
13
手塚治虫は連載した作品を単行本として出す際に加筆や書き直しをするので有名だが、完全版と銘打ったこの本は両方を乗せている。その比較が非常に興味深かった。 又、「上を下へのジレッタ」同様の絵のラインをワザとラフにしているのも魅力的だ。2017/11/20
還暦院erk
8
図書館本で読んだことはあるのだが、ラストが正反対の雑誌掲載分も読みたくて、本書を購入。第3部の群論も含め、読み応えあった!手塚先生の飽くなき漫画追求欲に改めて触れることができた。完成版に感謝。2019/02/25
またの名
7
少数の男女だけが性を営み雑務や欲望の捌け口や殺し合う戦争には性を持たない無性人間達をアリ社会のように使役する、という夢想が主人公の精液から実現してしまったエロ漫画そのものの手塚作品。生から死まであらゆる欲動の発散に使われたまま黙ってるわけはなく、全ての人間に革命を要求し「お前たちはセックスにシットしてるんだ 自分たちに味わえないものをヒガンでンだ」と非難されるが、さらに結末は連載時と単行本で分岐。「無性人間に戻るくらいなら舌をかんで死んじゃうーッ」との絶望にも歓喜にも聞こえる叫びが主題なのかは、永遠に謎。2025/01/25