感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こも 旧柏バカ一代
21
日本の歴史が農業中心の社会であったという通説に疑問を投げかけた1冊。百姓は単なる農民ではなく、多様な職業を営んでいたこと、そして日本が陸の農業だけでなく、海を通じた交易や経済活動に支えられていたことを明らかにしていた。日本って海洋国家だもんな。2025/02/24
tsubomi
5
2013.10.29-11.02:複数の講演録なので話がやや重複。基本的な内容は「百姓=農民」「倭人=日本人」ではなく多様な職種の民衆が含まれるということ、現在日本の国土・海域とされている中でも地域によって独自の政治・経済的発展と歴史があり、中央から独立した無数の自主・自警団が国際交流していたこと、日本は決して均一な単一民族国家でも農業主体の国でもないこと、です。ここにも明治新政府の意図的な思想先導を感じました。特に敗者の歴史を研究することの重要性、「海賊→海の領主」という呼称は印象的でした。2013/11/02
デューク
3
陸の農業からの視点でしか語られてこなかった日本史に、海民という新たな視点を加えた筆者。その講演録。 「百姓」は農民のことではない。今までの歴史認識を覆す「網野史観」を確立した筆者。江戸時代の能登の「百姓」の研究から、「百の姓」としての、商業民や職人としての民衆の生き様をつぶさに紐解いてきた。視点を変えることで、今まで見えてこない世界が見えてくる。そんな当たり前のことを再確認させてくれる、知的好奇心をくすぐる一冊。おすすめ2019/06/18
なつきネコ
2
〇人々の息づかまで、聞こえてきそうな一冊。世界と孤立した島国ではなく、世界と繋がった島国だった日本。紀州で切り開いた材木が川を下り、海に流され中国に売られた事に驚いた。 なるほど雑賀集みたいな鉄砲傭兵集団が出てるわけだ。百姓は農民の考えは日本は自発的革命がなかったと言う罵りに百姓一揆は弱者の反抗だと言う意見から生まれた考えかなと思う。しかし、昔の百姓はしたたかで賢い。現代人は働く事が馬鹿になったなと思う。2014/03/17
suzuki
1
近世までの日本は農業主体の社会であったとする従来の歴史観に一石を投じる内容で、いわゆる水呑百姓は貧農ではなく、海を活用した漁撈や商工業による豊かな階層であった、と主張している。 物事を理解するには、まずシンプルなモデルに落とし込んで、そこを起点に、そのモデルに当てはまらない事例などの分析に考え方を広げていくのがよいと思うが、日本の歴史学もそういう段階を目指しているということかな。 本書は、筆者が発表した論文や講演を集めたもので、各章での内容の重複が多い。学術資料としてはよいと思うが、読み物としては微妙。2019/03/27